輪島僚也 粒子計算モデルによる泥岩の風化過程の再現解析 大塚悟  主に泥岩に生じる膨潤およびスレーキング現象は,盤膨れ・地すべり・斜面崩壊等の地盤災害を引き起こす.その中でも,モンモリロナイトやベントナイトに代表される膨潤性粘土鉱物を含む泥岩は,吸水により著しく体積が増加する.また,それらが乾燥することにより表面や内部に亀裂が生じることで風化が促進され細粒化を引き起こし,それらを含む切土斜面や盛土の強度に多大な影響を及ぼす.そのため,泥岩の吸水膨張・乾燥収縮による風化プロセスを詳細に把握することは地盤防災の観点から重要な課題の1つである. そこで,本研究では,膨潤性粘土鉱物を含む泥岩の乾湿繰返しによるスレーキング現象の過程を詳細に把握するためのDEMモデルを拡張し,乾湿繰り返しを受ける泥岩のスレーキング現象のシミュレーションを2次元で実行し,得られた結果から提案モデルの適用性を検証した.また,現地で採取した泥岩試料を用いて促進スレーキング試験とスレーキング率試験を行いシミュレーション結果と比較した. シミュレーションの結果としては,粒子間の固着応力を変化させることにより,DEMモデルの破壊性状を変化させることができたが軟岩と同程度の粒子間固着応力のパラメータでは,スレーキング率が十分ではなく外見の変形挙動も実際の泥岩と異なっていた. DEMモデルの破壊性状と実際の泥岩試料を用いた試験の変形挙動を比較したところどちらも浸潤時に大きく形状が変化していることがわかった.また,粒子間固着応力がtμ’= 5.0×104(N/m),tμ’= 1.0×105(N/m),tμ’= 1.0×106(N/m)では,亀裂の発生や泥状化の様子も試験とシミュレーションで概ね同じような挙動が確認できた.今回のシミュレーションでは,DEMモデルの粒子間固着応力のほかに膨張領域を100%,70%,50%,30%と変化させて解析を行った.膨張領域が100%の場合では,tμ’= 1.0×106(N/m)のケースでスレーキングが見られなかったが非膨張領域を導入することによりスレーキング率と変形挙動に変化が見られ実際の泥岩試料の風化挙動に近づいた.今後の展望として,実際の泥岩は浸潤により粒子間の固着が弱まると考えられるため,新たに含水比や水分量によって膨張量が変化するパラメータを導入することでより現実的なモデル化が可能である.