HO SY QUOC 軟弱地盤における高速道路盛土の長期沈下に関する研究 大塚 悟 日本海沿岸東北自動車道は新潟中央JCTを起点に日本海に沿って酒田市,秋田市などを経て青森市に至る総延長約340kmの高速道路である.新潟県内では,約90kmであり,海岸州と河川によって構成された軟弱地盤上で盛土主体の道路構造を構築したため,供用後,長期にわたる残留沈下の影響から交通に支障を及ぼし,継続的な維持・補修を余儀なくされている.長期にわたり継続的に沈下が進行すると,橋台と盛土の接続部等では段差が生じ,道路を走行する上での安全性が損なわれるため,縦断修正として,オーバーレイ工法が実施されている.しかし,オーバーレイにより盛土荷重が年々増加していくため,沈下の原因となるとともに路面補修の長期化を招くなど悪循環に陥ることになる.更に,盛土内の地下水位の変動は上載荷重の変動として機能する.本研究では,数値解析(弾塑性圧密変形解析)により検討区間(日本海沿岸東北自動車道の聖籠新発田IC〜中条IC間)の盛土の長期沈下のメカニズムを明らかにすることを目的とする. 原因分析により盛土沈下の原因としてオーバーレイ,盛土内の地下水位変化,地盤特性などが原因に挙げられることから,個別に影響の分析を実施した.盛土の地下水位変化については飽和・不飽和浸透流解析を用いて,盛土内の地下水位変動の解析を実施し,現地での計測との比較から盛土内水位の変動が想定以上に起こりうることを示した.更に,盛土内の地下水位変動による圧密沈下の可能性について検討することを目的に,繰返し圧密試験を行った.実験結果から,繰返し荷重により圧密沈下が継続的に進行することを明らかにして,繰返し荷重による沈下への影響の大きいことを示した. 次に,オーバーレイや盛土内の地下水位の繰返し変化が盛土長期沈下にどう影響するか確認するため,弾塑性構成式SYSカムクレイモデルを用いて,盛土沈下のシミュレーションを実施した.現地の情報は少なく,解析条件や地盤定数の設定に課題を残すものの,盛土の長期沈下を適正に評価することができた.しかし,解析では,盛土荷重が大きくなると変形量が大きくなって解析できない問題が生じた.この点は今後改善する必要がある.今後は解析対象の地盤条件を現地調査などにより明確化して,本研究で試みた様々な課題の更なる研究を通して,数値解析の精度向上を通して長期沈下の原因究明を図る必要がある.