千葉佳奈瑛 路面性状評価における車内騒音・振動の利用に関する研究 宮木康幸 我が国では,道路維持管理の指標としてMCI(Maintenance Control Index)が一般的に使用されている.MCIデータの取得には専用車両を用いた路面の点検作業を要し,多大な費用と時間を要する.また,MCIは数百メートル程度の区間で平均的な路面状態を評価しているため,点検区間内において特に重度な損傷を有する箇所をMCIデータから特定することは困難である.ゆえに点検頻度は限られているうえ,優先的な補修箇所を選定するうえで不便である.そこで,本研究は,点検区間内において特に損傷が大きい箇所を,簡易的かつ廉価な手法で推定することを目的としている. 市の舗装点検データ(平成25年度)を集計した結果,長岡の市道においては,ひび割れがMCI低下の主原因になっていることがわかった.このことから各種損傷状況のうち,ひび割れの発生個所を推定することを目標とした.方法としては,自家用車内に発生する振動加速度・騒音の変化を計測し,実際の路面ひび割れ状況との相関を検証する.また,研究の中で騒音と振動のどちらが状況によって有用であるかについても検討を行う.測定は騒音計とタブレット用振動計測アプリケーションを用いて行い,測定データの分析は,騒音と振動加速度データをそれぞれwaveファイルとDATファイルからcsv形式の数値データに変換したものを用いた. 実測値と実際の路面状態とを比較した結果,進行方向に対して垂直に発生したひび割れ(横ひび割れ)の発生位置については,測定値の大小からおおむね予測することができた.一方で,横ひび割れ以外のひび割れ状況に関しては,測定値から単純に推定することはできなかった.次に,ひび割れ発生個所から卓越した振幅を得ることを目的として,路面の平たん性による振幅への影響を取り除く方法を検討した.まず,平たん性は低周波成分,ひび割れは高周波数成分に優位に影響すると仮定しFastとSlowの2種類の実効値を計算した.Fastは特定の時点に対して前後0.05秒分のデータを平均化したものである.SlowはFastの10倍の範囲で平均化したものである. ここでSlowは平たん性の影響が優位であるとし,FastとSlowの差が大きい箇所においてひび割れが顕著であると予想したうえで実際の路面状況と比較した.その結果,ひび割れ発生箇所のうち横ひび割れについては79.1%が予想箇所と一致し,網状のひび割れに関しては67.8%が一致した. 今後の課題として、ひび割れ状況を細分化し、周波数分析を行うことでそれぞれの状況に合わせた数値フィルターを選定することがあげられる。