坂本 恭史 越流に対して粘り強い堤防補強工法の実験的研究 大塚 悟 本研究の目的は、近年の集中豪雨等に起因する越流による破堤の報告が多いことを受け、越流に対して粘り強い堤防を目指すことにある。河川堤防は治水のために設けられた基本的な社会基盤でありながら、破堤の原因として最も多いとされている越流に対しては考慮されていないのが現状である。経験則的に設定した計画高水位を超えてしまうような洪水は対象外であり、ましてや土構造物である堤防はこれが発生した場合には決壊することが多いこともわかっている。また、経済的な面から今後我が国では河川堤防に投資できる財政能力は低下すると推測されている。これらのような現状を踏まえ、半永久的でコストの低い、自然材料を用いて越流に対して粘り強い堤防補強工法を提案するために、模型実験を行った。 実験では、実河川堤防の下流側を想定している。通常、現地発生土で構成される堤防の下流側は、細粒分を多く含む不透水層の地盤から構成されていると考えられる。これを受け、堤防が基礎地盤を巻き込むほどの大崩壊に至るとは考えにくいため、簡易的に堤体部のみで実験を行った。堤防模型は、天端部250mm×高さ250mm×奥行き190mm、また法面勾配1:1を基本形状とし、無体策を含めた全6ケースを行った。このうち、3ケースは裏法面にのみ砕石による対策を施し、1ケースは天端にのみ対策を施し、天端舗装における耐越流効果を検討した。また、これらを複合させた対策として1ケース行った。また、これら全6ケースの各対策以外の条件は統一し、砕石による堤防補強効果を検討した。 結果として、無体策の堤防の越流が発生してから破堤に至るまでの時間は、裏法面にのみ対策を施したもので最大2.3倍、天端部にのみ対策を施したもので3.4倍に延長された。また、これらを複合させたケースにおいては、破堤が確認されなかった。以上の結果より、天端部の舗装と裏法面を砕石で保護するだけで、越流に対して粘り強くなることがわかった。これは、通常堤体は外部侵食による法面の流亡によって破堤に至るが、法面に間隙比の大きい砕石を配置することで,越水を内部侵食させることでこれを防ぐことができ,さらに土被りによって地滑り,堤体材の防止できるためである。また、河川堤防は天端部の舗装の影響が最も大きいことがわかった。今後は、越流水深や越流時の流速を変化させて越流に対して堤防が粘り強さを保てるのかを検証したい。