宇井智章 RIMSによる土骨格内部の浸透流の直接計測 大塚悟  近年,大型台風や集中豪雨による降雨量の増加に伴い,洪水や河川堤防の破堤等の自然災害が全国各地で頻繁に発生している.最近では2018年7月にも西日本豪雨により岡山県倉敷市真備町の小田川で発生した洪水による破堤が起こり,真備町の三分の一が水没し,約4,600戸の家屋が浸水するといった被害が発生した.西日本豪雨以外にも近年では毎年のように自然災害による被害が発生している.このような堤防破壊など土木構造物の損傷を引き起こす主なメカニズムは@越水による破壊A浸透によるのりすべりB内部侵食による破壊の3つが挙げられ,堤防などに影響を与える破壊の原因は,約30~50 %が地盤の内部侵食であるとされている. この内部侵食現象とは浸透流によって土構造物内部の土粒子が浸透流とともに徐々に流亡する現象を指す.内部侵食現象は地盤内部で発生するため被害の状況を直接的に確認することができない.また,土粒子の流亡といった地盤工学と浸透流といった流体工学の相互作用を扱うため,未だに解明されてない点が多い.  そこで,本研究ではRIMS技術を用いて直接見ることができない内部の浸透流を可視化させる実験方法を確立させ,簡易的な模型実験を通して浸透流の特性を把握することを目的としている.地盤内部を観察する方法としてはMRIやX線CT等が存在するが,比較的高価であり容易に実験を行うことができない.また,レイノルズ数による流体の状態に応じた浸透流の特性を把握する研究が存在しているが,層流状態から乱流状態までの範囲で一貫して観察した研究は存在しておらず検討の余地がある.  以上のことより,本研究では層流状態から乱流状態までの範囲で流体の状態を変化させた場合の浸透流の挙動を観察することを目的として模型実験を行った.  実験結果から,層流状態から乱流状態まで浸透流を観察することができ,数値解析と検証可能なデータを得ることができたことや,レイノルズ数の大きさの変化に伴って,間隙中の流速の分布傾向が変化することを実験的に確認することができた.本研究で浸透流計測手法を確立することができたため,今後は応用展開させ土粒子と浸透流の両方の計測実験に進むことが可能となった.また,現状では,数値解析は層流状態の条件でしか解析を行えず,乱流状態まで解析を行うためには乱流モデルを組み込む必要があり,本研究で得られた結果を参考にして今後進めていき解析と実験の両方で精度を向上させていく.