横井 純 論文題目 半円形供試体曲げ試験におけるき裂開口角とアスコンのき裂進展の相関性に関する研究   高橋 修,中村 健  アスコンの疲労破壊抵抗性を評価する試験の一つとして,日本国内では4点曲げ疲労試験が実施されている.しかし、この試験は機器の設定が複雑であり,試験時間は開始から終了まで供試体1つにつき数時間から1日要するため簡易性に欠けている.一方,ヨーロッパやアメリカではSCB(Semi Circular Bending)試験と呼ばれる試験が規格化されており,破壊エネルギーなどを調べる試験として金属や土質などを対象に実施されている.この試験は半円形の供試体に荷重を加え破壊することで物性を評価し,要する時間は供試体1つにつき2分程度と簡易的である.そこで,4点曲げ疲労試験と同様にSCB試験でも確認できるき裂の進展に着目し,この試験によってアスコンの疲労破壊抵抗性をより簡易的に評価できないかと考えた. 本研究では,SCB試験を実施し得られた結果から靭性破壊のパラメータとして破壊強度,破壊エネルギー,可とう性指数を,脆性破壊のパラメータとしてき裂開口角,き裂先端開口変位,き裂先端開口角を算出した.そして,それらのパラメータと4点曲げ疲労試験の結果より算出されたき裂進展の速度の相関を調べた結果,以下の知見を得られた. 相関があると判断できたパラメータは,破壊強度,可とう性指数,き裂開口角,き裂先端開口角であった.これらの中で最も相関が高かったパラメータは可とう性指数で,決定係数は0.907となった.一方,き裂先端開口角を算出していた際に,算出に使用する定数r0の値を一定にすると決定係数が約0.95と高くなるという性質を確認した.しかし,実際のr0の値は温度やバインダーによって変化するため,無根拠に統一した値を設定することはできない.そこで,試験条件ごとのr0の値を抽出したところ10 ℃の温度帯においてr0の値が一定値に収束していることを確認した.このことから,10 ℃であればき裂先端開口角はき裂進展の速度と高い相関がとれると考えられる. 以上より,SCB試験による可とう性指数は,4点曲げ疲労試験によるき裂進展の速度と高い相関があり,4点曲げ疲労試験に代わる疲労破壊抵抗性を評価するパラメータとしての利用可能性があることがわかった.また,き裂先端開口角を利用して疲労破壊抵抗性を評価する場合,試験温度が10 ℃であれば利用可能性が高まることがわかった.