鍛治 健伍 表層用砕石マスチックアスファルトの配合設計に関する基礎的研究 高橋 修  砕石マスチックアスファルト(Stone Mastic Asphalt.以下,SMA)は,通常のアスファルト混合物と比較すると粗骨材量とフィラー量の比率が高く,高強度,高耐久性である特徴を有している.日本では北海道型SMAが代表的なものとして挙げられる.しかしながら北海道型SMAには,水分の凍結による内部亀裂の発生や骨材のかみ合わせによる施工不良,施工直後の骨材飛散の発生等,複数の問題が報告されている.本研究ではこれらの問題点を改善するための基礎データの収集を目的とした.  本研究では,米国のAmerican Association of State Highway and Transportation Officials(以下AASHTO)が定めているSMAを参考にした.AASHTO SMAは日本とは異なる評価指標を用いており,ワーカビリティも日本のSMAよりも高い水準が期待できる.そこで本研究では,北海道型SMAの機能改善を行うためにAASHTO SMAと北海道型SMAをそれぞれ作製し,性能を比較した.  最適アスファルト量(以下,OAC)を設計する際に用いる指標はそれぞれ異なる.AASHTO SMAは空隙率を調整する際にOACを決定し,北海道型SMAはマーシャル安定度試験によりOACを決定する.AASHTO SMAの方が大きくなったため,AASHTO SMAの方が骨材飛散を抑制できると考えられる.また,作製を行う過程で北海道型SMAの再現性が低いことを確認した.このことから北海道型SMAはワーカビリティが低いことが考えられる.  本研究では4種類の評価試験のうち静的曲げ試験,動的摩擦係数測定試験,ホイールトラッキング試験において有意差はみられなかった.これによりSMAの強度が材料や設計方法に起因しないと考えられる.また,きめ深さ試験はAASHTO SMAの方が大きく,優位性がみられた.この試験の評価指標であるきめ深さは路面冠水時の動的摩擦係数に影響を与える.そのため,きめ深さが北海道型SMAの問題点であるといえる.  また,この差が生じた原因はAASHTO SMAと北海道型SMAの作製方法が関係すると考える.AASHTO SMA配合設計における粒度の調整と骨材のかみ合わせ効果を調整しているため,きめ深さが大きくなったと考えられる.  以上の知見より,本研究ではAASHTO SMAと北海道型SMA の性能はきめ深さに差があり,北海道型SMA の性能を改善するためにはAASHTO SMAにおける粒度の調整と骨材のかみ合わせ効果の調整を取り入れることが必要であると考えた.