柳井 貴裕 切削アスファルト残存層を活用した橋面防水中間層の構築に関する基礎的研究 高橋 修,中村 健 道路橋は,床版コンクリートの上にアスコンの橋面舗装が施工されており,床版コンクリートと橋面舗装の境界面には,床版コンクリートの損傷や劣化を防ぐために床版防水層が設けられている.床版防水層の型式には,シート系床版防水,塗膜系床版防水などがある.近年では高性能床版防水が開発され,設計耐用年数が30年と非常に長期間の供用に対応できるようになっている.これに対して,アスコン層の橋面舗装の供用年数は5年〜15年であり,高性能床版防水の耐用年数と比べてかなりの差がある.そのため,橋面舗装の打換え時には床版防水層が耐用年数未満であっても再施工されることになる. また,橋面舗装の打ち換えの際には重機を使ってアスコン層を剥ぎ取ることになるので,床版コンクリートの表面に多少の損傷を与えてしまう.床版コンクリートが損傷した場合は修復作業を実施するが,限られた工費,工期では完全に修復できないのが現状である.そして,損傷したまま橋面舗装を再施工し,供用し続けると床版コンクリートの耐用年数よりも早くに劣化する恐れがある. 以上のことから,切削後に残存したアスコン層を補強して,中間層として再利用できれば,床版コンクリートおよび床版防水層に損傷を与えることはないと考えた.切削後の残存層には,ヘアクラックが生じている場合が想定される.そこで,床版コンクリートと床版防水層が健全であれば,残存アスコン層にアスファルト乳剤等を散布し,防水機能を強化して,橋面防水中間層として再利用できると期待される.このようにして橋面防水中間層が構築できれば,工費削減や工期短縮に寄与するはずである. 本研究では,切削後の残存アスコン層に乳剤を散布して補強し,橋面防水中間層を構築することについて検討した.使用乳剤は,既に実績のある高濃度改質アスファルト乳剤とした.この乳剤は,浸透型の乳剤より安価で,通常のタックコートやプライムコート用のものより粘度が高いのが特徴である.橋面防水中間層を構築するために,求められる性能は防水性,接着性,耐久性である.そのため,乳剤で補強した橋面防水中間層に対して必要とされる性能を評価し,橋面防水中間層の実現性,妥当性について考察した.試験結果より,乳剤の散布量1.2 ?/m2,ひび割れ幅1.0 mm以下であれば防水性,接着性とも問題がないこと,乳剤を散布することでアスコン層の耐用年数が延命する可能性があることを確認した.