清水 孝史 アスファルト舗装表面の経年劣化と温度変化がトップダウンクラックに及ぼす影響に関する研究 高橋 修,中村 健    アスファルト舗装に生じるひび割れの形態は,その発生要因と合わせて多様にわたる.車両走行によって下向きの荷重がアスファルトコンクリート(以下アスコン)層に作用した場合,底面で曲げ引張が作用するため,底面から上面に向かってひび割れが進展するボトムアップクラックの発生が一般的である.しかし,実際の路面には,車輪通過位置に沿ってアスコン層表面から底面に向かってひび割れが進展するトップダウンクラックの発生が報告されている.そして,このトップダウンクラックの発生メカニズムについては明らかとなっていない.  トップダウンクラックの発生メカニズムに関する仮定に基づき,これまで様々な要因について検討をされてきた.しかし,発生要因と考えられる舗装温度と劣化程度の影響に関しては明確な知見が得られていない.そこで本研究では,この2つの発生要因がトップダウンクラックの発生に及ぼす影響について,室内試験と数値解析によって検討した. 室内試験では,アスコンの応力緩和性状試験,片振り曲げ疲労試験,静的曲げ試験および曲げ疲労試験を実施して,発生要因とされる応力緩和やひび割れ抵抗性などの物理特性を評価した.数値解析では,多層弾性理論に基づいてアスコン層の力学挙動を計算し,影響因子とされる経年劣化と温度変化がトップダウンクラックの発生に及ぼす影響について検討した.  室内試験の結果より,アスコンの応力緩和に対して温度変化が及ぼす影響は大きく,熱劣化および繰返し載荷による累積ダメージの増加が及ぼす影響は小さいことがわかった.また,アスコンの疲労破壊抵抗性は,劣化程度および温度条件によって異なり,劣化が進行して温度が高いほど疲労破壊抵抗性は低いことがわかった.  数値解析の結果より,応力緩和後にアスコン層表面に生じる引張応力は高温であるほど大きく,応力緩和前に底面に生じた引張応力との差は高温条件で大きくなることがわかった.さらにアスコンの劣化を再現するため,Miner則に基づいた累積ダメージで評価したところ,アスコン層が高温かつ劣化が進行しているほど,表面の累積ダメージは大きく,トップダウンクラックが発生しやすい.  以上の検討より,温度変化および劣化の進行はアスコンの物理特性にかなりの影響を及ぼし,アスコン層が高温かつ劣化が進行するほどトップダウンクラックが発生しやすい状態になることが明らかになった.