濱本翔平 新潟県における地域公共交通のサービス水準に関する横断的分析 鳩山紀一郎 少子高齢化社会が進行し,車社会になりつつある昨今,住民の足となる地域公共交通の利用者は減っているのが現状である.その中でも地域住民の意向に則して利益をあげ,存続している公共交通事業も少なくない.既往研究はいずれも個別の事例を取り扱っているもので,それらを横断的に分析した報告は少ない.そこで本研究では,新潟県の自治体やNPOが運営する地域公共交通を対象に横断的に分析を行うことを目的とする.先行研究に沿い,地域に密着した運行運営を行っている地域公共交通事業者として,長岡市で行われている3社にアンケート調査と同時にヒアリング調査を行った.またその結果より新潟県内における24の自治体で行われている67の事業についてアンケートを行った.ここではサービス水準に関する項目について考察した.本研究では独自で設定した1人あたりコストCPPという指標に対し,運行時におけるサービス内容が大きく影響している事がわかった.まずCPPに与える影響として『運賃割引の種類』『情報提供の方法』『利用者の声の収集方法』『声かけや補助の実施』『ダイヤの乱れ時の対策』『他事業への活用』があげられた.その結果,『利用者の声の収集方法』が強い影響を持っている事がわかり,いかに経費をかけずに利用者の声を集めることが,CPPの値を効率の良いものに出来ると考えられた.得られた分析結果として『情報提供の方法』『利用者の声の収集方法』『ダイヤの乱れ時の対策』のいずれに関しても利用者数を増加させる傾向にあるという結果となったため,既存の方法以外にも新たな方法を取り入れることも重要であると考えられる.また運賃収入と運行経費に関して,互いに増加する傾向にある項目として『運賃割引の種類』が挙げられた.このことより,運賃割引の数を増やす際には経費がかからないものを優先して行うとよいこともわかった.今後の課題としてデータ数,サンプル数の確保及び新潟県周辺の都道府県地域の事業内容も分析結果に取り入れる必要があると考えた.アンケート設計段階において,アンケート調査項目の精査を行うことも重要である.全ての事業が同じ回答をしていた項目が複数あったためである.また非説明変数CPPとの相関があまりなかったため地域特性に関する分析が行えなかった.各地域公共交通の路線ごとの詳細な地域特性のデータが得る必要があり,人数や面積によらずCPPを説明できる要因となると考えられるためである.