渡部 真大 点検の高効率化が橋梁の維持管理費用に与える影響の分析 鳩山紀一郎 我が国の道路インフラ施設は高度経済成長期に集中的に建設されたため、老朽化が進行し平成26年からは5年に一度の橋梁点検が義務付けられた.点検技術は今後の技術革新により大幅に向上するとみられ、橋梁の健全度が正しく判定されることで早期補修に繋がり、補修費用も低減されると考えられている.本研究は点検技術の効率化が達成できると仮定したとき、補修費にどのような影響を与えるか、新潟市を対象にシミュレーションを行った. シミュレーションを構成するものとして橋梁の供用年数に対する健全度低下傾向、補修費の計算式、また健全度の判定確率の定義を行った.健全度低下傾向は新潟県市町村の14,026橋の点検データを基に補修を行わない場合の自然劣化速度での予測式を作成した.補修費の推定式には実際の補修費用のデータを参考に、健全度グループごとに異なる係数を用い、健全度の判定によって補修費用が増加するように立式した.健全度を判別する式は30年間のシミュレーションを行った結果、点検の精度を向上させても現行の補修予算では健全度の劣悪なグループの割合は減少せず、点検の精度自体が補修費に与える影響は少ない.現行の点検精度のまま補修予算を増加させたところ、健全度が劣悪なグループは減少した.また、点検頻度を現行の5年以上にすると、補修予算がストックされることにより次回補修時により多くの橋梁を補修できるようになったため、点検精度は固定し最適な補修予算と点検頻度を求めることでより健全度が良好なグループを増加させることができるという知見が得られた. これらの結果から、精度・点検頻度・補修予算に対応する等高線図を作成し、30年後のある健全度グループを一定の割合以下・以上にする最適な点検頻度や補修予算を決定することを可能にし、橋梁の維持戦略の提言が可能になった.