西岡昌哉 渋滞下における運転者の副次課題が知覚時間及び注意レベルへ与える影響 鳩山紀一郎  渋滞下でドライバーは運転課題と運転能力の不均衡から単調な追従運転に加えて疲労や退屈を感じ,居眠り運転や不注意運転に及んでしまうと考えられている.そこで,渋滞下のドライバーに対して副次課題を課すことによって,課題と能力の均衡が改善され,知覚時間の短縮や精神的負荷負担の減少,注意レベルの維持につながるのではないかと考えた. 本研究では渋滞下で行われている車内活動とドライバーの特性や運転傾向の関係について明らかにし,渋滞下のドライバーに対して副次課題を与えることによるドライバーの知覚時間,精神的作業負荷・負担,注意レベルへの影響を明らかにし,交通渋滞の心理的解決に向けた基礎的な知見を得ることを目的とした. 初めに,渋滞下車内活動調査を行い,「同乗者の存在」と「若者ドライバー」が渋滞下の能動的活動に対して優位に影響していることを明らかにした. 次に,渋滞下車内活動調査より設定した実験手法の検証と短時間における副次課題の影響を調査した.その結果,受動的・能動的な副次課題が1)若年ドライバーの注意力に悪影響を及ぼさず,2)状況ストレスを軽減する,および3)知覚時間を短縮することが分かった. そして,長時間の室内実験を行うことで渋滞下の副次課題の影響を調査した.その結果,副次課題「何もしない」は,若年ドライバーの知覚時間を増加させ,時間経過とともに注意レベルが低下することが明らかになった.さらに,「音楽鑑賞」と「クイズ」にはドライバーの眠気の負担を少なくする効果や「見ること」に対する負荷を低下させることが分かった.また,副次課題「クイズ」では,副次課題「音楽鑑賞」で反応遅れがある人の反応遅れを有意に減少させる場合があることが分かった. 加えて,Webコンテンツ試験運用実験を行ったことで,渋滞中に副次課題を課すことでドライバーに知覚時間は短縮されること,また地域の観光やイベントを関連させた方が関心を得やすいなどのフィードバックを得た. こうしたことから,本研究で実施した副次課題「クイズ」のようにドライバーの注意を低下させない程度のものなら渋滞下のドライバーに対して積極的に導入していくべきだと考えた.また,本研究で反応遅れがあるドライバーとそうでないドライバーがいたように,渋滞下のドライバーが時間を有効活用できるコンテンツを開発する際に,ドライバーの性格や運転傾向などを考慮することが望ましいと考える.