高倉拓実 製造業の立地を考慮した応用都市経済モデルによる新潟市中央環状線の建設効果の推定 佐野可寸志 現在新潟市では新潟市南西部の角田浜から、西蒲区、西区、江南区、北区を横断し、北東部の新潟東港までを結ぶ、新潟中央環状線の建設が進められている。新潟中央環状線が供用されると、都心へのアクセス性、通勤などの交通利便性の向上や物流軸の構築などの交通に関する効果と、沿線のまちづくりの誘導や物流軸の構築に伴う、製造業などの工場の移転など立地に関する効果の両面が期待される。また、新潟市内で分譲されている全工業団地40のうち残区画がある工業団地はわずか2つであり、新潟市は72.3haの新たな工業用地の開発を提案している。この様に新潟市内の工業立地の需要は高いと考えられ、中央環状の建設に伴い、多くの立地の変化が起こると予想される。これらの背景から新潟中央環状線の建設による効果と新たに計画されている工業用地が供用された場合の効果を交通と立地の両面から定量的に評価する必要性は非常に高いと考えられる。本研究では土地利用モデルと交通モデルを統合した応用都市経済モデルを用いた分析を行う。その土地利用モデルの一部を元に製造業はその経営のために利用される事が多い工場の立地が考慮可能なモデルを作成する。このモデルを用いて新潟中央環状線建設による効果を交通と立地の変化から評価すると同時に、新たに計画されている工業用地の立地の効果を定量的に評価することを目的として研究を行った。 結果として、従来モデルに無い立地選択要因として特定した工場系用途地域面積と加工、製造業からICまでの距離はどちらも有意なパラメータとして得られた。これらのパラメータを用いた提案モデルでは、従来モデルのR2値が0.178だったのに対し、R2値が0.404まで上昇した。新潟中央環状線の建設効果としては、交通に関わる効果として、新潟中央環状は、交通容量の大きい道路の代替になるほどの効果は無く、新潟市の中心部の交通を誘導することはできないが、それらの道路を通る一部の通過交通を誘導することが可能で、郊外中心地域の内部を通る交通量を減少させる効果があることが分かった。立地に関する効果として、住宅の立地は微小な変化しか起こらないことがわかった。一方で工場の立地は、環状線の事業中区間周辺の一部のゾーンで立地が増加することが確認された。これは中央環状の供用後は貨物車の交通費用が低下し、新たな交通結節点ができることで利便性が上昇するためだと考えられる。最後に、新たな工場用地を中央環状供用後に供給した場合の効果を検証した。その結果として、新潟市が検討している新工場用地の設置位置は、市内中心部に立地している工場の移転を促す場合に有効であることが示唆された。