塩田 朋史 事故リスク情報を考慮した経路選択モデルとその提供効果 佐野 可寸志 本研究では,道路の安全性に関する事故リスク情報を道路利用者に提供し,安全性の高い経路の利用を促すことで交通事故の削減を図ろうとする交通事故リスクマネジメント手法に関する研究の一部分を実施した.まず事故リスクと料金のトレードオフ関係を推定するため,費用便益分析における時間価値の取り扱いに習い,トリップ目的別に,新潟県内のネットワークを想定した経路選択SP調査から,非集計経路選択モデルを構築した.通勤,営業用貨物,自家用貨物トリップについては事故影響リスク(事故渋滞に巻き込まれる確率)を事故リスク指標として採用した.私事トリップについては,カーナビ利用時を想定し,一般道路優先経路の事故率が高い場合,高リスク情報を提供する仕組みを提案した.推定されたパラメータは,営業用貨物トリップ(トラック事業者)を除き有意であった.トラック事業者の経路選択は,事業所の規模や経済的状況が与える影響が大きく,また経営的に厳しい事業所が多く事故渋滞の回避のためには高速道路を利用しないということが確認された.通勤トリップについては,一般道路利用経路が30分以上となるようなトリップ長の場合,事故影響リスクが有意な説明変数であることが確認され,事故影響リスク減少価値は23.1[円/%]と推定された.また自家用貨物トリップについては,71.8[円/%]と推定された.私事トリップについては50〜60kmの距離帯で,一般道路優先経路が高リスクであるとき,541円までなら料金を支払い,事故リスクを回避するという結果となった.次に,ナビタイムジャパンのカーナビによる「低リスク経路案内」の効果検証を,ナビ利用者の検索履歴データを用い新潟都市圏を対象に実施した.便益分析は,経路長別に期待事故件数,高速道路料金,所要時間,距離,一般化費用に着目して行った.その結果,変化が大きかった項目は期待事故件数と高速道路料金であり,変化が大きかった距離帯は40〜60kmであった.40〜60kmの距離帯における期待事故件数の増減率は-3.4 %であり,事故リスクを考慮する推奨経路案内の事故削減効果が確認できた.また長距離トリップにおいては,高速道路を利用することを前提に,事故リスクが低減されるような利用インターチェンジ(高速道路利用区間)の情報提供も効果的であることが示唆された. 今後の課題としては,整備されたネットワークデータを活用し,ネットワーク特性の異なる地域で複数の事故リスク指標で効果検証を行い,地域に応じた最適な事故リスク指標を提案することを挙げた.