大島亮 冬季交通円滑化に向けた降積雪時における信号交差点交通処理能力の実態分析 佐野可寸志,伊藤潤,鳩山紀一郎 冬季において, 積雪が特に甚だしい地域は豪雪地帯と呼ばれ,国土面積の半分以上がそれであり「降積雪」の影響による交通環境の悪化が大きな社会問題となるケ‐スが頻発している. 中でも新潟県長岡市は特別豪雪地域に指定されており10ヵ年平均降雪量が500cmを超え,冬季間は旅行速度の低下や交通渋滞など道路の交通容量に多大な影響を与えている. また,一般道路において交通渋滞の主原因(ボトルネック)となるのは「信号交差点」が大半であり,その信号交差点の処理能力(交通容量)を決定づけるのは飽和交通流率であるといわれている.既存の研究において冬季における飽和交通流率がシャーベット状態に至ると最低でも2割の低下を及ぼす報告があり,豪雪地域等では冬季間の交通をいかにして確保するかが大きな課題となっている.そこで冬季道路交通確保対策検討委員会では,平成30年頃から道路交通確保に向けた新たな施策を実施しているのだが,現状は未だ好ましいとは言えない. そのため本研究では,信号交差点を基盤とした冬季交通円滑化のために冬季交通における車両の発進,停止及び走行に影響を与えると思われる路面状態・降雪量を重点に, 道路種別(除雪レベルの違いによる比較のため),消雪パイプの有無によって,夏季と冬季における交通状態の変化を比較して, 新潟県長岡市における冬季交通処理能力の実態を調査した. 調査結果から,直進飽和交通流率は最低でも2割低下(シャーベット路面),また最大で5割低下(圧雪凸凹路面)を示し,降雪量においても圧雪路面時に3→5(cm/30min)に至ると約1割低下を及ぼす結果となった.また低下割合の大きかった交差点は共通して「消雪パイプ無」であり,「有」には存在しなかった凍結・圧雪(滑・凸凹)状態が調査交差点の過半数以上を占めた. これらより,交通容量低下防止の鍵を握っているのは飽和交通流率と消雪設備の二つである可能性が高く,そのため如何に飽和交通流率を低下させないような除雪体制をとるかが重要な課題となってくる.しかし,冬季路面における飽和交通流率を無積雪時(乾燥状態)同様に目指すのは現実的に厳しい面が多く,ある程度の雪の影響を受けている状態を前提で検討していかなければならない.すなわちその交差点に合った乾燥時の飽和交通流率を基準に最低低下割合(直進:2割 右折:1割)を「定常状態」として円滑化を図っていかなければならない. そこで本研究は,消融雪施設導入・現在の除雪基準見直し・最適な除雪出動タイミング・冬季損失を踏まえた交差点設計の検討を提案する.