一瀬 恭平 来街者の選好特性を考慮した津波避難誘導システムの提案と効果 鳩山紀一郎 津波対策の多くは主に地域住民を対象としたものであり、土地勘のない観光客などの来街者を対象とした津波対策は十分に検討されていない。既存の津波避難の誘導を行うシステムは最短の避難場所に誘導する形式をとっているが、道路状況などで不安を感じることが考慮されていない。そこで本研究では、来街者を対象とした津波避難誘導を行うシステムについて検討し、津波避難時における行動選択モデルを分析する。まず、選好意識を調査するために行動選択に影響を与える要因について検討を行い、SP調査による二肢選択形式のアンケート調査を実施した。調査結果を二項ロジットモデルによるパラメータ推定を行った結果、「避難時間」、「狭幅員道路」、「避難方向」、「混雑度」が主な選択要因であることが分かった。次にこの行動選択モデルが実際の利用者にとって好ましい経路を提示するかを調査するために津波避難誘導を行うアプリケーションを開発した。本来は災害時に通信回線が遮断される可能性を考慮し、オフライン上でも経路探索ができるようにするべきであるが、今回は実験用であることからどの携帯端末からでもアクセス可能であるWebアプリケーション形式を採用した。アプリケーションはGPSから位置情報を取得し、そこからの避難先を、行動選択モデルを利用して避難場所と経路を決定し、携帯端末上に経路と現在の位置を表示する。そして、実験中の行動軌跡を記録するために位置情報はサーバに一定時間でサーバに送られるように制作した。次に作成した避難誘導を行うアプリケーションを用いて実証実験を実施した。実証実験は本手法による誘導法と最短経路による誘導法の2種類を被験者に利用してもらい、各ルートの道路や避難場所の評価と、どちらの誘導法が好ましいか調査するアンケートを実施した。結果、75%の被験者が本手法による誘導法の方が好ましいと回答した。また、評価についても避難方向、狭幅員道路に対する評価が高台へ逃げるルートの方がよいと判断していることが分かった。以上の結果から最短経路による誘導法よりも本手法による行動選択モデルを適用した誘導法が好ましいことが分かった。しかしながら、最短経路による誘導法が好ましい回答した被験者の理由が行動選択モデル以外の要因を挙げており、行動選択モデルの精度を上げることで本手法による誘導法の改善が行われると考える。