伊藤圭汰 機械選別を適用した可燃ごみのメタン発酵技術の開発 小松俊哉 姫野修司  焼却量の削減やエネルギー回収を目的として、収集された可燃ごみに機械的、生物的処理を組み合わせた MBT(メカニカル・バイオロジカル・トリートメント)技術を適用し、生分解性が高い厨芥類、紙類を多く 含んだ発酵適物を用いたメタン発酵によるエネルギー回収が注目されている。本研究では発酵適物を単独、 または下水汚泥と混合してメタン発酵実験を行い、発酵特性の把握を目的とした。 本報告では、発酵適物単独の学内連続実験について述べる。  発酵適物単独の学内連続実験においては、微量金属無添加ではA市、B町の発酵適物共に酸敗が発生した。 メタン発酵の進行には微量金属(Fe、Ni、Co)が必要であり、不足・欠乏すると、メタン発酵は律速もしくは、停止する大きな 要因になると言われており、次にNi、Coを添加し実験を行った。Ni、Coの65mg/kg-TS添加によって安定した メタン発酵が行われ、TS10%、滞留日数30日の条件で投入VSあたりのガス発生量は636NmL/g-VS以上を示した。 Ni、Coの添加量を変更した際、130mg/kg-TS添加条件ではガス発生量の増加は見られなかったが、32.5mg/kg-TS添加条件では ガス発生量が急激に低下した。続いて、由来の異なる発酵適物を用いてNi、Coに加えFeの添加も行い、連続実験を行った。  TS10%、滞留日数30日の条件でFeのみの添加では約60日後にガス発生量が減少していたが、Ni、CoとFe(250mg/kg-TS)を 同時に添加することで、滞留日数を20日に短縮させVS負荷を上昇させた実験条件であってもNi、Co 16.3mg/kg-TSの添加で 2滞留以上(53日間)安定した実験を行うことができた。  本研究では実験結果に基づき、発酵適物単独のメタン発酵システムについて焼却量削減等の評価を行った。 可燃ごみは機械選別により発酵適物、燃焼適物に分けられ、発酵適物の嫌気性消化後、脱水汚泥の焼却を行わないと 仮定した場合、可燃ごみの焼却量は31.9〜46.3%削減可能な試算結果となった。一方、脱水汚泥を全量焼却すると 仮定すると可燃ごみの焼却削減量は1.1〜8.0%に留まった。脱水汚泥の含水率は元の可燃ごみと比較して高いため、 焼却ではなく有効利用が必要である。燃焼物については、可燃ごみ全体のTSと比較して上昇しており、焼却効率の上昇が期待できる。 以上より、発酵適物は単独消化の場合微量金属の添加が必要であるが、高いガス発生量が見込まれ、 メタン発酵において有用なバイオマスであると考えられる。今後、焼却量も削減され、エネルギー回収及び 最終処分場の延命化が図れるごみ由来発酵適物の嫌気性消化システムが実用化されることが期待される。