石川隆世 下水放流水を熱源とする下水熱ヒートポンプシステムの構築と植物工場への利用 姫野修司 下水が持つ熱、下水熱は外気温と比べ夏季は低く、冬季は高い性質を持つため、空気よりも下水熱を活用する事により効率よく熱生産が可能となるポテンシャルを持つ一方、利用はほぼなく、再生可能エネルギーの利活用が求められている。 下水熱の利用場所として管渠等があるが、中でも下水処理場は下水が集約する施設であり、常に大量の下水が安定的に流入するため、下水熱を利活用する場所として大きなポテンシャルを持つ。 しかし、下水処理場は都市部を除き周辺には建物が少なく、大規模な熱需要化が少ないことや存在しても距離があり、ポテンシャルを損なう等の問題がある。 そのため、本研究では下水処理場内での下水熱活用方法として植物栽培への利用に着目した。通常冬季の植物栽培では温度管理が必要なため、空調に使われる光熱費が多くを占めるため、下水熱に変換することで費用の削減が期待される。 また、植物栽培において夏季に行い冬季は空調コスト面による栽培停止問題も下水熱により通年を通した植物栽培への利用が期待される。 本研究で選定した栽培植物はバジルとワサビである。バジルは夏季では全国的に栽培されるが外気温が20℃以上を育成条件となるため、冬季の栽培はほぼ空調が管理される植物工場か沖縄など南の方のみとなる。 またワサビは主な生育場所が上流の川になり綺麗で水温が11〜13℃と低温が生育条件となる。以上の二種を、太陽光を光源とするビニールハウスでの栽培することで夏季はワサビ、冬季はバジルの温度に下水熱を利用し通年を通した植物栽培への適用を目指した。 研究の結果、下水熱回収では4月から10月までの冷熱回収時は外気温と同等な効率、10月から1月までの温熱回収時には外気温より大きく効率的に熱を回収することが出来た。 また、2017年度から採熱方法の変更により冷温熱回収効率が向上しより効率よく熱生産を行うことが出来た。 植物栽培ではバジルは夜間にはビニールハウス内の構造により20℃以下となる期間があったが、正常に生育し栽培することが可能であり、製品化されたバジルと同程度の品質であることが分かった。 また、バジルに利用される消費熱量より、灯油を熱源とする暖房機や、蛍光灯を光源とし密閉性が高く保温性に優れた閉鎖型植物工場とのランニングコストの比較を行ったが、いずれも本施設の下水熱源ヒートポンプシステムの方がランニングコストは低く抑えられることが分かった。