手塚 裕貴 落葉期高密度UAV-LiDARデータを用いた着葉期森林DSM推定手法の検討 高橋 一義 森林は,地球環境や生物多様性の保全,土砂災害の防止等,極めて多くの機能を有している.そのため,森林の状態やその変化を知り,適切な整備・保全を行うことにより,森林を健全な状態で維持・管理していく必要がある.DCHMは森林の研究や管理において重要な指標である.DCHMはDSMとDEMの差分であり,正確なDCHMの生成には着葉状態にある森林のDSMとDEMの二種類の三次元データが必要である.空中LiDAR計測はそれらの三次元データを得るために利用されるリモートセンシング技術の一つである.森林のLiDARデータの多くは,主に地形モデリング用に落葉期に収集されたデータである.そのため,落葉期に取得された既存のLiDARデータから着葉期の森林DSMを推定することができれば,森林計測に要する時間やコストの大幅な削減に繋がり,今後の森林管理において非常に有益である.そこで、本研究では LiDAR搭載のUAVにより落葉期に取得した森林の高密度点群データを用いて,着葉期のDSMを推定する方法を検討する. 本研究では二つの方法で落葉期DSMから着葉期DSMを推定する.一つは,決定木法による土地被覆分類により解析領域内の落葉領域を特定し,その落葉領域に対してSGフィルタ処理を施し,着葉期DSMを推定する方法(落葉領域に着目した推定手法)である.もう一つは,一度全域にSGフィルタ処理を施し,後に地面領域をSGフィルタ処理を行う前の元のDSMに復元することで着葉期DSMを推定する方法(地面領域に着目した推定手法)である. 土地被覆分類結果として,地面領域に関してはDCHMが著しく低い地点を特定することで容易に分類できたが,落葉領域に関しては樹冠エッジや森林ギャップの部分で誤分類が多く,特定は容易ではなかった. 本研究で検討した二つの着葉期DSM推定手法は,互いに落葉期DSMから着葉期DSMを推定することを可能にした.二つの推定法の結果の比較として,リファレンスデータとの平均絶対誤差(MAE)を算出することで結果の評価を行った.落葉領域に着目した推定手法で推定を行った場合はMAE=1.98m,地面領域に着目した推定手法で推定を行った場合はMAE=1.63mとなった.したがって,リファレンスデータとの差が小さくなるのは地面領域に着目した推定手法による推定結果であることがわかった. 本研究では落葉領域に着目した推定手法より地面領域に着目した推定手法の方が簡略的な処理により概略的な着葉期DSMの推定結果が得られる推定手法であると結論づけた.