合屋渉太 UAV-LiDAR計測による広域の水稲草丈推定手法に関する基礎的検討 高橋一義 日本の米の食料自給率は97%とほとんど輸入に頼らない供給能力を持っている。そのため、コメの安定供給は重要であり、水稲の定期的な生育調査を行い、過剰生育の抑制や施肥時期の判断を行う必要がある。生育調査時の労力削減や能率向上、調査結果の再現性や空間代表性を高めるため、リモートセンシング技術を活用した手法が研究されている。従来、衛星や航空機などの高高度からの広範囲な調査が行われてきた。一方で、マルチロータ式のUAV(Unmannd Aerial Vehicle)の性能向上に加え、小型化・低価格化により、雲より低い低空を飛行でき雲障害の影響を受けない近接リモートセンシングが行われている。 PhanらはUAVに搭載したLiDARによる近接リモートセンシングを想定して水稲群落上方にレールを設置し、草丈の基準となる地面位置を利用しないレールからの近距離LiDAR計測による草丈推定手法を提案している。そして、LiDARのレーザ入射角が水稲群落に対してほぼ鉛直となる(±8°)計測領域において、LiDAR計測した群落層厚さと慣行計測した草丈との関係を解析し、草丈を誤差4〜10 cmで推定可能であることを示している。この手法は鉛直入射領域のみを対象とするため、圃場全体を計測するためにはより広域に手法を適用する必要がある。 本研究は、UAV-LiDAR計測による広域の草丈推定をするために、2017,2018年に水稲群落上方からのLiDAR計測を実施した。そして、茎葉の繁茂状況・レーザ入射角・レーザフットプリント径の影響を検討した。加えて、実圃場への草丈推定手法の適用が可能か検討した。 その結果、 1)草丈が同一であっても茎葉の繁茂状況が異なる水稲群落では、LiDAR計測した群落層厚さと草丈の関係はレーザ入射角の影響を強く受ける。一方、最高分げつ期まではほぼ影響を受けないことが確認された。また、レーザがほぼ鉛直入射する領域であれば、茎葉の繁茂の影響はほぼ受けないことが確認された。 2)同一圃場を異なる高度(2.8 mと5.0 m)からLiDAR計測を行った結果、レーザフットプリント径の差による明確な影響は確認できなかった。 3)実圃場において草丈推定手法を適用した結果、草丈推定が困難であった。原因の一つとしては、水稲の栽培方法や水稲群落内の雑草による影響が考えられる。  以上1)より、計測高度を変えてもフットプリント径が同じであれば、鉛直入射領域に制限することで草丈推定手法を適用できる可能性がある。