影山拓哉 ひまわり8号とTerra/Aqua MODISデータを利用した農地NDVIの季節変化抽出手法の検討 高橋一義 日本の稲作農業において水稲の生育調査は栽培管理やコメの品質,収量予測のために重要である.水稲を直接計測する慣行計測は,水稲株の生育状態を正確に把握することができる.しかし,慣行計測は現地調査による計測が必要なため,広範囲に分布する圃場をすべて現地で調査することは現実的ではない.そのため,リモートセンシングによる広範囲の解析によって水田の植生フェノロジーを把握することで水稲の季節変化や生育状態の把握・管理だけでなく,水資源の有効利用にもつながると考えられる.地球規模での環境変動や気候変動などを把握する指標として,植生フェノロジーがある.この植生フェノロジーは地球上の様々な環境問題と密接に関係しており,植生フェノロジーに着目した研究がなされている.衛星による観測では雲による障害で地表面が観測できないことがある.高空間分解能のMODISと高時間分解能のひまわり8号を組み合わせることで,雲による観測障害を解決し,水田NDVIから田植え日,刈り取り日を推定し,季節変化を抽出できると考えられる. 本研究では2017年4月1日から10月31日のMODIS,ひまわりデータを用いた.対象範囲は北緯34°〜40°, 東経135°〜142°をとした. それぞれのデータからNDVI画像を作成し,データを組み合わせることが妥当か検討した.センサの違いや,大気補正の有無によるNDVI値の違いを考慮し,ひまわりNDVIによる補間のため,MODIS NDVIへの換算式を求めた.また補間による観測領域の変化量についても調べた.結果はy=1.11x-0.02の式で換算でき,相関係数は0.78,決定係数は0.61,RMSEは0.13であった.また,ひまわりデータを用いることで約24%観測可能領域が増加することが分かった. MODISで観測できない画素をひまわりで換算した補間画像を利用して,水田の田植え日,刈り取り日の推定を行い季節変化抽出とした.対象地点は推定の基準日となる,水稲の栽培暦を公表しているJAで,管轄内に画素内水田占有率が52%以上の画素が5×5を目安に,ある程度かたまっている地点,8地点を設定した.日付の推定には衛星時系列データ解析ソフトのTIMESATを利用した.結果はTIMESATを用いた推定では田植え日より,刈り取り日のほうが高い精度で推定が可能だった.また補間画像を使うことで推定精度の向上が見込まれることが分かった.問題点としては,栽培暦を基準とすることで,実際の田植え日,刈り取りの違いや参照する栽培暦の品種と実際に植えられている品種の違い,広域なJA管轄地域内における栽培暦の差異によって誤差が生じてしまうことが分かった.これらの対処方法としては各画素でTIMESATのパラメータ設定を調整することで改善されることが見込まれる.