山田嵩   衛星画像及び地上撮影画像による積雪面積情報を考慮した融雪流出解析   陸旻皎    積雪寒冷地での融雪期における流域内の高精度かつ高頻度な積雪情報の把握は、水資源の有効活用や融雪洪水の予測を行う上で非常に重要である。しかしながら、この積雪情報の把握を現地にて直接行うことは、雪崩等の危険が伴う上に複数回の調査では費用が掛かり現実的ではない。そのため、現在ではリモートセンシング技術を用いた研究が行われている。リモートセンシング技術の中でも、衛星画像を用いた方法では広範囲の積雪情報を把握することが可能であるが、衛星の飛来頻度が限られ、撮影頻度は低い上、天候によっては雲の影響でデータが取れないことも多々あり、実用に耐えうる積雪情報を得ることが難しい。一方で地上撮影画像であれば情報を得られる範囲は限れるが、撮影頻度の増加が容易であり高頻度に積雪情報を得ることが可能である。また、航空レーザー測量を用いる方法もあり、こちらは衛星画像と地上撮影画像とは異なり積雪面積情報のみならず積雪深も把握することが可能だが、費用が掛かり衛星画像以上に積雪情報を得られる頻度が限られる。  そこで、本論文では、衛星画像での積雪面積情報と地上撮影画像での積雪面積情報とを比較して相関関係を推定し、地上撮影画像より推定した流域全体の積雪面積情報を融雪流出解析に考慮することを目的とした。本論文ではまず、標高を基準にする標高分割と面積を基準にする面積分割の2種類の分割法により、流域を10個の標高帯に分類した。次に流域内にて見える領域と見えない領域を判別する視認領域図の作成し、衛星画像と組み合わせて解析を行った、その後、現地での写真撮影、写真の解析及び融雪モデルの構築及び解析を行い、地上撮影した写真から推定した流域全体の積雪面積率及び融雪モデルの再現性を検証した。  その結果として、視認領域と流域全体での積雪面積率には強い相関関係があることが確認できた。地上撮影した写真より求めた積雪面積率は、衛星画像による積雪面積率との比較では全体に負のバイアスがかかり特に中間帯の標高では過小評価であったが、撮影期間中の降雪による積雪面積率の上昇を確認することができ、長期的な変化において概ね妥当な結果が得られた。また、融雪モデルによる解析では、実測値と比較して計算値では融雪のペースが早く出てしまい、再現性は良好とはいえなかった。一方で衛星画像による積雪面積率によるフィードバックを加味した解析では、融雪末期の再現性の向上に成功し、積雪面積率のフィードバックの効果を確認することができた。