鎌田 幹広 中小河川を対象とした簡易流量推定法の提案 陸 旻皎  昨今,中小河川における洪水被害が多発しており,新潟県においても平成23年7月に発生した新潟・福島豪雨により,一級河川である五十嵐川や破間川などが破堤した.そのため河川整備や防災対策が急がれている.洪水対策をする際,対象河川での氾濫解析を行うため,水位・流量等の水文データや河道縦横断図の空間情報等の地形データが必要となる.しかし,県管理中小河川は数も多く,河川延長が長いことから予算的,時間的制約により整備が遅れている.そのため,水文データについては流量観測体制を整える事が難しいため流量の推定が課題となり,地形データについては測量データが古いことや,いまだに測量がされておらず測量データ自体が存在しない区間もあるため,解析を行うにあたり十分な河道の空間情報が得られないという課題が存在する.  本研究では,簡易に流速推定が可能であるマニング式とフリーソフトである河川シミュレーションソフト「iRIC Nays2D Flood」を利用し川幅と水位,流量の関係式を構築し,簡易流量推定が可能な手法を提案することを目的とした.使用した地形データは中小河川である五十嵐川下流部の河道改修時に実施された横断測量データである.しかし,先でも述べたように,中小河川では定期的な測量を行っている河川は多いと言えない.そこで,「Laser Mirror Scanner LMS-Z210」を用いたレーザー測量を実施することでLPデータの抽出し,代用モデルとして地形データを作成し.この2種類のモデルを用いて流量推定を行った.はじめに,横断測量データを用いて洪水シミュレーションを行い,それをもとに5つの手法で流量推定を行い,最も精度がよく優れた方法を簡易流量推定法とした.次に,代用モデルの精度検証を行うため,代用モデルで同様のシミュレーションを行い,簡易流量推定法から得た流量を横断測量データの流量と比較した.最後に,得られた簡易流量推定法が実際の河川で適用可能か,同じ五十嵐川の中上流部に位置する荒沢観測所を対象とし,実際に荒沢観測所で観測された水位データから簡易流量推定法により推定流量を求め,それを観測流量と比較する事で実用性を検証した.  その結果として,定常流を用いた流量推定法が最も精度よく推定可能であったため,これを簡易流量推定法とした.簡易流量推定法は中小河川である五十嵐川の下流部,上流部のどちらでも適用可能であった.代用モデルは横断測量データと比較すると流量を15~25 %程過小評価していた.実際の水位を使用した簡易流量推定法による流量再現はピーク時でわずかに過大評価があったが概ね精度よく観測流量を再現できた.