笠原主税 1987年千葉県東方沖地震における浦安地域の地震動と液状化の検討 池田 隆明 2011年東北地方太平洋沖地震では東京湾沿岸の埋立地を中心に軟弱地盤で液状化が発生し, ライフラインや家屋に多大な被害を生じさせた. 特に浦安市ではその被害が顕著であった. しかし, 当該地盤より採取された試料の液状化強度を求めたところ想定より高い強度を持つ事が判明した. この矛盾した液状化強度の妥当性を確かめるには複数の既往地震での液状化被害状況を比較検討する事が必要である. そこで, 私は浦安市において強い揺れ及び液状化被害を生じさせた既往地震のなかから1987年千葉県東方沖地震に注目し, この地震での揺れの程度及び液状化状況を検討しようと考えた. 液状化検討手順は@対象地震の選定, A液状化に関する調査(状況,地盤調査結果等), B地震動レベルの評価, C液状化評価・簡易(液状化判定), D液状化評価・詳細(動的解析), E最終評価(対象地震に対する)の6段階である. 本研究では時間の都合上@からCまでを行った. @では対象地震として1987年千葉県東方沖地震を選択した, この地震は千葉県東方沖約8km地点, 深さ58kmに震源を持ち, マグニチュード6.7の地震である. この地震により銚子市, 千葉市, 勝浦市で最大震度5を観測し多くの建物被害が生じた. また浦安市では液状化が発生し小規模ながら噴砂の跡が発見された. Aでは当時の資料を検索し揺れの程度や液状化状況を調査した. その結果, 浦安市には地震計が未設置であり, なんらかの方法により地震動レベルを推定する必要があった. Bでは距離減衰式を用いて地震動レベルの推定を行った. この距離減衰式というものは震源からの距離とマグニチュードが判明すれば当該地点の地震動レベルが推定できると言うものである. 様々な研究者により複数提案されているが, 今回は断層タイプが考慮でき, 当該地震を考慮しており, 震源を面として考えている司・翠川式を使用した. またその精度を向上させるため実際の観測記録との残差を最小にするために回帰係数kを調整した. その結果, 震源より53kmの地点である浦安の予想震度は113cm/s2となった. CではFL法により液状化判定を行った. その結果, 実際に噴砂が見られた地点に程近いボーリングデータでは地表から4m前後の深度で小規模な液状化が起こりうる事が確認できた. 本研究の結果, 浦安市での地震動レベルは113 cm/s/sと推定できた. 今回推定した地震動レベルを用いて液状化判定を行ったところ実際の液状化状況を説明できるものとなったため妥当と言える.