石井 一騎 山岳地域における凍結防止剤の飛散と鋼材腐食に関する調査研究 岩崎 英冶 耐候性鋼材は表面に緻密なさび層を形成させ鋼材表面を保護することで以降のさびの進展を抑制することから維持管理を行う上で有効であるが,不適切な条件で用いると,腐食劣化の要因になることも事実である,これは,これまで耐候性鋼橋梁に関する適切な指針が少なかったため耐候性鋼材の防食性能を適切に生かせないまま,構造計画,設計・施工,あるいは維持管理が行われたことに起因する.凍結防止剤の飛散による腐食を調べた事例はあるが,高低差のある並列橋や地山に近い橋梁といった地形環境の影響を受けている橋梁の調査の事例は少なく鋼道路橋塗装・防食便覧にも目安は記載されているが,この目安は過去の調査結果から基づいて提案されたものであり,凍結防止剤の散布量や交通量の大小が考量されていない状態となっており効果について不明となっている. 高低差のある並列橋や地山に近い橋梁といった地形環境の影響を受けている橋梁の調査の事例は少なく未だ有力な規定が存在しないことから,既往の目安を決めるきっかけとなった高知県の複数の地形環境の影響を受けている橋梁を対象に,凍結防止剤の飛散量,暴露試験片の腐食量を定量的に把握し,地形環境による腐食の関係性の知見を得ることにより,既往の目安の再確認を行う,そして本研究室において過去に長野県で調査を行った結果と比較することで地域による影響を明確にすることが目的である. 本研究により確認された結果を以下に示す. (1)散布された凍結防止剤はすぐに飛散するものではなく,2割から3割程度は翌月の飛散に関与することが確認された. (2)翌月の飛散に寄与する分を含めた散布量Sと飛散量CにはC=kSの関係があることが確認された.長野県内で実施された結果と今回の高知道の結果よりkは0.5〜3.1の範囲になった,このことから地域による影響は小さく,構造物などの位置関係による飛散のしやすさなどの影響を受けると推察される. (3)飛散量Cと鋼材の1年板厚減少量Aは,既往の長野での結果と同様のA=αCβの関係が確認できた.長野県内の調査結果と比較し回帰式の傾きβに大きな違いが見られなかった.鋼材腐食は飛散塩分だけでなく温湿度(濡れ時間)などの影響が大きいのではないかと推察される.