武田 渚 河川減水域における水温構造の決定要因に関する研究 細山田 得三 河川の減水区間とは,人為的な行為によって河川水が少なくなっている区間である.河川環境を考慮する上で水温は重要な検討項目である.ダム等の取水により,減水区間が生じた場合,夏季に河川水温の上昇が顕著となる場合がある. 本研究では,水温環境を決定する諸要因に対する既往文献調査を行い,その特徴について調べた.さらに熱流入・流出に関する経験式のレビューを行い,その特性を調べるとともに,それらを使った数値シミュレーションを実施し,水温環境を予測する諸要因の影響について考察した.また,夏季には実験水槽による太陽光への暴露実験を実施し,太陽光および大気から入射出する種々のエネルギーによる水槽内部の温度構造の変化を調べた. 文献調査の結果として,各参考書において共通することは,実際に数値を入れて計算ができるかどうかが不明確であるということである.数値計算においては,定義の違いが結果に大きく影響してくるため,不適切であると考える. 実験結果としては,円筒水槽上面から入射した熱エネルギーがほぼ分子拡散によって鉛直下方に伝搬していることが確認できた.また,日中の加熱期と夜間の冷却が交互に現れていることがわかる. 数値計算の結果としては,7月下旬は洪水警報が発令されるなど,やや低温傾向だったこともあり,水温の上昇は小さい.8月初旬では徐々に加熱が進んでいる.日中の変動が顕著に表れているのは最大で水深25cm程度であり,それよりも下部は昼夜変動の影響が小さく,長期的な季節変動を受けてゆっくり加熱されている.また等温度線は下部に向かって右に傾斜しており,下部には時間遅れで到達していることがわかる. 本研究によって河川減水域における水温環境を予測するための計算式の確認とそれらに含まれるパラメータの感度について概略を把握することができた.特に計算式が持つ水温環境への影響力について知見を得ることができた.熱流入の式から推定されるように,雲量,比湿の上昇が水温の上昇,透明度の下降が水面付近の水温の上昇およびそれに伴う水域全体の水温上昇に作用することを確認した.また水部の下部に位置する飽和土砂の水温環境は比熱や密度を考慮した結果,温度拡散係数が水のおよそ2倍程度であり,それを考慮した数値計算や室内実験でも確認することができた. 今後は,より実現象に近い条件を設定して,実験や数値計算を行う必要があると考える.