氏名:品田啓太 論文題目:海浜流と吹送流の影響を受ける海岸の流況把握に関する研究 指導教員名:犬飼直之(細山田得三)  概要(975字):2016年8月に北海道石狩海岸において若い男性4人が死亡する事故が発生した.石狩海岸ではこのほかにも複数の水難事故が発生している.石狩海岸は海浜流が卓越するとされているが,現地で確認された事例はまだない.また吹送流についても海岸付近の流れや急速な風向変動による流況変動などについて把握されていないため,本研究ではこの事故を例に,海浜流と吹送流の影響を受ける海岸の流況を把握し今後の事故防止対策に資することを目的としている. 研究内容としては石狩海岸での既往事故状況の把握および海岸の現地調査,風向変動による流況変動の確認を行った. 既往事の発生前後で海象と気象の変動を確認した結果,風向の変動が発生している事例が多いことが確認された.このことから事故の発生には吹送流の影響がおおきいと考えられる。 また現地調査で気候安定時に離岸流の発生が確認された.このことから事故の発生要因として吹送流の流況変化と海浜流の影響が大きいと考えられる. 風向変動に伴う流況変動を過去の現地観測データから確認した.その際の天気図から低気圧または高気圧が石狩の南北どちらを通るかで4種類に分類した.結果として低気圧・高気圧が北側を通過した場合時計回りに,南側を通過した場合に反時計回りに風向が変動した.また流向変動については風向変動後すべての事例で時計回りに変動した.このことから風向が変動後数時間で流向が変動するということがわかった.また表層流速については風向変動後に増大していたことから,風向変動後に流況が大きく変動したと考えられる. 数値実験から表層流速の推算を行った.2016年8月の事故発生時の気象変動データを入力した結果風向変動後数時間後に石狩湾全体で流向が変動し,流速が増大した.これは観測データから得られた結果と同様の変動をしているため,定性的に正しいと考えられる.この結果から風向変動後に海岸付近の流速が増大する可能性が高いことが考えられる 今後の課題として表層流速の推算に使った式を地形条件など考慮したものにすること,事例の数が少ないため現地観測などを行い他の風向変化のデータを収集し,より正確な吹送流の流況変化を把握していきたい.風向と流向の変動には関係があると考えられるため,最終的には天気図から風向の変化を読み取り,そこから吹送流の流況の変化を予想することを目指したい.