NGUYEN HONG DAI 3次元非線形長波方程式の特長とその妥当性に関する研究 細山田 得三 流体の計算として粒子法,VOF法,格子ボルツマン法,ナビェ・ストークス方程式直接計算法など,様々な計算が提案されている中,長波(浅水)方程式系の計算方法は古典的な計算方法であり,建設工学の分野では広く用いられている.長波方程式系の1次元,2次元の計算は実績が多数であるが,3次元の計算は少ない.3次元長波方程式系の計算は圧力は静水圧で近似される計算である.建設工学,地球科学など鉛直方向スケールが水平方向スケールに比べて極めて小さい場合,有効であり,反復計算がないので,高速で計算できる.平成29年7月九州北部で豪雨が発生し,被害を拡大した原因の一つは流木だと考えられている.大雨で倒された流木が橋に引っ掛かり,川の水をせきとめ,川の両側に氾濫することが現場で目視された.この現象を数値解析するには3次元流体の計算が必要である.本研究では,モデル化した流木の影響を受けた洪水氾濫の数値モデルを構築した.さらにその計算法の適用性を明らかにする.まず計算の妥当性を確認するため,段波現象を解析し,解析結果と理論式の比較および流速を解析し,比較検討した.段波現象の計算結果より段波の伝播速度を求め,理論式から求められた結果と比較すると,先端の流量が小さいときは両者がほぼ一致しるが,先端の流量が大きくに設定すると,解析値が理論値より遅いことが分かる.原因としては数値解析を行うときに水と空気の境界で水面の定義によって運動量が損失すると考えられる.次いで流体運動の数値解析を行い,実験結果と比較した.解析結果は概ねに実験とよく一致していることを確認した.その後モデル化した流木の影響を受けた洪水氾濫の数値モデルを構築し,計算を行った.この計算ではモデル地形の川の中に一定の高さの流木と仮定する障害物を浮かべ,上流から川の中に水を流される.結果は障害物が川の水をせき止め,障害物の上流側に水位が上がり,水が川の両側に氾濫することが確認できた. 結論は段波での解析および実験と比較した結果よりある程度の3次元長波系の数値計算の妥当性を得ることができた.また,3次元長波方程式系による流木のある洪水氾濫の計算が可能であることが確認された.