長谷川拓也 柏崎平野の地震後地盤沈下の発生機構に関する分析 大塚悟 新潟県では市街地において消雪に用いる地下水の汲み上げにより地盤沈下が継続しており,問題とされている.しかし,2007年に発生した中越沖地震後,新潟県柏崎平野において粘性土地盤での沈下が確認された.この地震後の地盤沈下は急激であることや,地下水位が変動していないことから、従来の揚水による沈下ではなく地震動が起因となり地盤沈下が発生したのではないかと推測される.また,地震後の地盤沈下の平面分布は従来の地盤沈下の平面分布と一致していなかった.そこで,本研究では地盤沈下の分布を柏崎平野の地質構成や地形との比較から検討し,地震後の長期沈下の要因を明らかにすることを目的とし研究を行った. 地震による粘性土の長期沈下と砂の即時沈下を水準測量から得られた地表面沈下データから算出し,分布を見た.分布の傾向から沈下の要因を推察するために,地形分類によって整理を行うと即時沈下は被覆砂丘で多く生じていた.長期沈下は三角州で多く生じていたが,同じく軟弱層が堆積している谷底平野では長期沈下はほとんど生じておらず,地盤沈下は揚水によるものがほとんどであった.この要因が砂丘によるせん断力が作用したためだと考え,整理を行った.その結果,砂丘からの距離と長期沈下量に相関はなく,沈下に影響していないと考えられる. また,三角州地域でサンプリングした試料で物理・力学試験を行ったところ,この地域はおおよそ三種類の粘土が堆積しており,地表面から順にAc1,Ac2(mc),Ac2層となっていた.特にAc2(mc)は間隙比が大きく,自然含水比も高く塑性の強い粘土であった.圧縮指数と液性限界の関係からも高圧縮性を示していることより,初期に高位な構造を有しており,かく乱や荷重載荷により,構造の低位化に伴い著しく強度低下することが分かった.そのため各地点のAc2(mc)層の層厚を見たところ,最も地震後沈下量が大きかった鵜川流域中流部が最も厚く,内陸にいくにつれてAc2(mc)層の厚さも小さくなった.試験結果と各地点のサンプリングデータからAc2(mc)層が地震によって軟化圧密することによって従来とは傾向の違う地盤沈下が生じたと考えられる.