髙木大地

海岸防波堤の津波に対する安定性評価に関する検討

大塚悟
2011年に発生した東日本大震災では，津波によって多くのケーソン式防波堤が被害を受けた．防波堤の被害の特徴として，港内外の水位差で押されたケーソンの滑動だけでなく，マウンド内の浸透水の作用や、越流した波が港内側のマウンドを洗掘したことが挙げられる．津波来襲時の鉛直・水平荷重に対する支持力評価や浸透力の影響，ケーソンの地盤支持抵抗については明らかになっておらず，ケーソンの補強工法や安定性評価法も確立されていない． 
本研究では，解析手法として剛塑性有限要素法を使用した．既往研究で用いられていた物性値を見直し，実地盤を想定した物性値を用いて解析を実施した．解析結果よりケーソン下部両端からマウンド斜面下部にかけて大きなひずみが発生した．また，ケーソン背後のマウンドが荷重の進行方向に押し出されていることが確認でき，模型実験と同様の破壊形態が確認できた．支持力よりどのケースも実験結果と同等の支持力が得られ，特に水位差があるモデルについては浸透力の考慮に関わらず同等の支持力が得られた．
信頼性の向上を目指し，実地盤を想定した物性値を用いて実規模防波堤での再現解析も実施した．解析結果よりケーソンの港外側下部から港内側に向かってマウンドにすべり面が発生していることが確認できた．特に，ケーソンの両端部側のマウンドに大きな等価ひずみ速度が発生していることが確認できた．
以上より，剛塑性有限要素法を用いることで少ない地盤定数，応力履歴の影響がないにも関わらず，ケーソン支持地盤の破壊現象について合理的かつ適切に評価できることが明らかとなった．