清野 颯 内部侵食現象における土粒子と浸透流の直接観察方法の検討 大塚 悟,宮木 康幸,福元 豊 近年では特に地球温暖化の影響で集中豪雨や台風が多く発生しており,それに伴い降水量も増加し,斜面の地すべりや河川堤防の破堤等の自然災害が全国各地で報告されている.破堤などにより,土木構造物の損傷を引き起こす三つの主要なメカニズムは,越流,堤防法面の地すべり,内部侵食とされている.堤防などに影響を与える事故の原因は,約30~50%が地盤の内部侵食であるとされている.この内部侵食は,浸透流によって土木構造物の地盤材料を侵食し,土粒子が浸透流と共に流亡する現象を指す.地盤内部の土粒子は,状況により異なる速度で侵食されるが,土粒子の侵食や流亡といった地盤と浸透流の相互作用を扱うための基礎的な知見が乏しく,未だに解明されてない点が多いため,取り扱いが難しい.しかし,日本国内においては,内部侵食に関する研究が進んでおらず,関心が低いのが現状である.内部侵食の取り扱いが難しい一つの要因として,実際に,内部侵食現象の発生・進行を直接目視することができないことが挙げられる.これは,内部侵食現象に限らず液状化など,地盤内部で発生している土粒子の挙動は目視できず,明確なメカニズムを知ることができない.海外で行われている既往の研究では,土の侵食強さに対する実験等は行われているが,内部侵食の挙動を観察する研究は行われていない.そこで本研究は,簡易に内部侵食現象を観察・実験を行うことができる小型模型装置を開発し,通常では見えない内部侵食現象における土粒子の直接観察方法及び浸透流の直接観察方法の検討を行う. 内部侵食はその発生機構によって様々な侵食タイプに分類されるが,実験ではcontact erosionと呼ばれる侵食現象に着目した.contact erosion現象を対象とした研究・実験は行われておらず,その発生原因も不明である.本研究から,土粒子の運動を直接観察方法の検討と同時にcontact erosionの侵食特性を把握するための第1段階の基礎的な実験を目的とする.また,浸透流の直接観察では,屈折率マッチング可視化技術を用いたPIV計測による実験を行った.PIV計測による浸透流速の直接観察が妥当であるか検討を行う. 実験結果から,開発された小型模型装置内でcontact erosion現象による土粒子の挙動を直接観察が可能であり,PIV計測による浸透流の直接観察も可能であることがわかった.今後は,土粒子の直接観察と浸透流の直接観察結果を合わせた比較を行う必要があるが,それぞれの実験で使用している流体が異なることから結果の相似関係も考慮する必要がある.