佐久間 洋直   CA法を用いた道路周辺騒音の推定   宮木 康幸    CA法を用いた3次元騒音伝搬解析は,理論的な点音源,線音源については妥当な結果が得られている.しかし,より実用的な場面,走行する自動車から数mの周辺騒音を想定した場合,自動車を点音源・線音源のみで表現することは難しいと考えられる.既往の研究ではエンジン音を中心に自動車騒音のモデル化を行ってきたが,自家用車では一般的にエンジン音の影響は小さく,タイヤ音の影響が大きいとされており,本研究ではタイヤ音を音源として配置した自動車音源のモデル化を行ってきた.  そこで,本研究では実際の道路騒音を想定し,走行速度が違う自動車の騒音測定を行った.まず走行する自動車から1.5m,3m,6m地点の周辺騒音を測定した.結果,受音点である騒音計に自動車が近づくにつれ音圧レベルが増加し,受音点の横を通過する時に音圧レベルが最大となり,それ以降は減少していった.また,周波数スペクトルは車速によらず,10〜30Hz付近の周波数が卓越しているが,60km/hでは100Hz 付近の周波数が卓越しているという結果が得られた.次に自動車のタイヤ音の測定をタイヤ前輪・後輪で行った.結果,タイヤ前輪・後輪の音圧は速度が上がるに連れて音圧レベルが大きくなっていた.また,周波数スペクトルが低周波(100Hz以下)で卓越していることがわかった.また,タイヤ音の周波数スペクトルは周辺騒音の周波数と同じような分布であった.  次に音源移動モデルと受音点移動モデルを比較し,受音点移動モデルの妥当性を検討した.結果,受音点移動モデルは音源移動モデルと同じような波形となり,CA法を用いた3次元騒音伝搬解析に対して受音点移動モデルを用いることは妥当であることがわかった.次に測定により得られたタイヤ音を音源とし,CA法を用いた3次元騒音伝搬解析により,受音点の音圧値や音圧レベルの推定を行った.解析方法は,車体に対しタイヤ音の音源を1つの点音源として配置した場合と複数の点音源とした2つのパターンについて受音点移動モデルで自動車速度に応じて解析した.結果,1つの点音源を配置したものでは,推定値が測定値に比べ,非常に小さい値となった.これにより,1つの点音源では自動車騒音を表現できないことがわかった.タイヤ音の音源を複数配置したものでは,推定値は測定値に近い値となった.これにより,走行する自家用車についてはタイヤ音のみを測定し、複数の音源として扱うことで道路周辺騒音が推定可能であることがわかった.