内田至 2016年熊本地震で被害を受けた益城町の地盤震動特性の評価 池田隆明 2016年4月14日21時26分に熊本県熊本地方において熊本県益城町で最大震度7を観測した地震(前震)が発生した.さらに約28時間後の16日1時25分に同じく熊本県熊本地方において熊本県益城町,西原村の2地点で最大震度7を観測した地震(本震)が発生した.この地震では大きな揺れが短期間で複数回発生したため本研究では建物被害の推定だけではなく,建物被害の進行状況について時間的な情報を持っている航空写真による建物被害進行状況の推定を行った. 航空写真による建物被害判定を客観的に判断するために建物の屋根損傷面積割合を被害の指標とした.そのため面積を定量的に判定できる真上から垂直に撮影された航空写真を正射変換した写真を使用した.Damage Gradeという指標を基に被害区分を5段階に分け建物被害を評価し,前震後から本震後にかけて建物の被害進行が確認できた.現地調査で得た写真から本検討で行った被害推定の判定精度の検証を行い「被害なし」と倒壊・全壊相当である「被害ランクD」の判定については高精度で判定を行えたことを確認した.さらに狭い範囲(約1.5×2km)で建物の被害と被害進行に差が見られたため,地盤震動特性を把握し建物被害との関係性の評価を行った. 狭い範囲で多くの複数点の地盤震動特性を把握するために,常時微動測定によって地盤の一次固有周期を算出した.その結果狭い範囲(約1.5×2km)で一次固有周期に差が見られた. 航空写真による建物被害進行状況と地盤震動特性との関係性評価を行った.その結果一次固有周期が0.5-1.5Hzである地盤上の建物に被害が見られず一方で1.5-3.0Hzである地盤上の建物は今回の熊本地震による揺れの影響によって大きな被害が発生することがわかった.この違いを生んだ要因の1つとして建物ごとに固有周期が存在するからではないかと考えられた.さらに被害の進行具合は地盤の一次固有周期の影響よりも前震後で被害が受けず耐震性能が落ちないことが重要だということが確認できた. 以上の結果から垂直写真を用いた家屋被害の進行状況の推定により,前震後から本震後にかけて建物の被害が進行していることが確認できた.そして常時微動測定により地盤の卓越振動数を算出した結果,秋津川付近での建物被害の大きさによる卓越震動数の違いが確認された.そのため建物被害原因には地盤特性の影響があることがわかった.