高野康太 バインダ性状評価に基づいたアスコンの応力緩和特性の推定 高橋 修   中村 健  アスファルトコンクリート(アスコン)には,粘弾性的挙動を示し,応力緩和する特徴がある.これは,粘弾性体のアスファルトをバインダに用いることで付与される性質である.したがって,アスコンの応力緩和特性は,バインダ性状による影響が支配的である.これまでに,バインダのポリマー含有率を高めると,アスコンの塑性流動やトップダウンクラックの発生を抑えられるとの報告がある.一方で,荷重測定型伸度試験機を用いたElastic Recovery Test(以下ERT)より,ポリマー含有率を高めると,弾性回復率が高くなり,応力緩和しにくくなることが知られている.  そこで,バインダの性状変化に伴うアスコンの物性変化を調査し,バインダ性状評価試験の結果を用いてアスコンの応力緩和特性の変化を間接的に評価することを目的とした.これには,より簡便にアスコンの応力緩和特性を推定できるようにする狙いがあり,応力緩和特性の観点からトップダウンクラックのメカニズム解明につなげたいと考えている.  バインダの性状評価試験とアスコンの物性評価試験を比較するにあたり,ERTと一軸圧縮応力緩和試験を実施し,応力緩和時間に着目して検討した.アスコンの応力緩和時間を評価するにあたり,一般的には最大荷重の1/expまで低下するために要する時間で評価する.しかし,バインダの性能差を評価するためには,より長いタイムスパンで評価する必要がある.したがって,最大応力比を定義し,最大応力からの低下割合を変化させて応力緩和時間を比較した.使用するアスファルトバインダは共通で,ポリマー含有率を0〜4%まで5段階に変化させたものとした.  本研究の試験結果から,ERTの応力緩和時間とアスコンの応力緩和時間には一定の相関性が見られた.これについて,ERTより求めたバインダの応力緩和時間は,最大応力比およそ30%におけるアスコンの応力緩和時間を示すことが分かった.そして,最適な最大応力比は骨材粒径によって異なることが分かった. 以上よりバインダ性状評価に基づいてアスコンの応力緩和特性の変化を間接的に評価可能であるという結論に至った.  今後は,バインダの劣化程度を変化させて同様の比較を行い,特性変化を調査する必要がある.供用中の道路は,骨材粒径や骨材粒度が変化しないため,混合物の物性においてはバインダの劣化程度の影響が支配的になるはずである.これにより,実舗装の物性が今後どのように変化するか推定可能になると考えられる.