坂井亮磨 補修用水工アスファルト混合物のワーカビリティ向上に関する研究 高橋修 栃木県の那須火山那須岳の西縁にある沼原ダムでは,平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震によりアスファルト表面遮水壁にクラックが発生した.これにより,ダム貯水からの漏水が増加したため,ダム水位を低下させて対応し,平成23年4月から6月までの間に加熱アスファルト混合物のオーバーレイによる補修工事を実施した.この補修工事以降は,同年7月より発電運用を再開しており,現時点まで漏水は発生していない. 補修工事に際しては,可能な限り人力による締め固めを行った.しかしながら,オーバーレイ補修個所のアスファルト混合物の設計空隙率が3%以下と規定されているのに対して,現場でのコア採取の結果は,平均値が6.2%とかなり大きな値であった.この原因としては,オーバーレイ補修箇所が斜面のため,人力作業による締め固めが困難であったことやアスファルトプラントからダムまでの距離が遠いため,長時間運搬によりアスファルト混合物の締固め温度が低下したこと等が挙げられる.一般的に,空隙率が4%以下であれば十分な凍結融解抵抗性を有しているとされるが,オーバーレイ部の平均空隙率が6.2%であった沼原ダムでは,冬季に最低気温が氷点下となる日が連続するため,空隙に浸入した水分の凍結融解作用による劣化が懸念される. そこで本研究では,補修用水工アスファルト混合物のワーカビリティについて着目し,補修工事に適用された配合よりもワーカビリティが高い配合の検討を実施した.また,温度低下が懸念される条件においても,十分な凍結融解抵抗性が確保できる4%以下の空隙率が得られるような配合について検討を行った. 評価試験の結果より,最大骨材粒径を小粒径化した新規提案配合は,補修工事で適用されたものよりも高いワーカビリティを有していることが確認された.また,同配合は締固め温度が施工管理温度である110℃を下回った場合においても,早期に空隙率4%が確保されていた.さらに,これら2つの配合よりもワーカビリティの高い配合の提案として,石粉や消石灰,植物繊維の配合割合を調整し,設計アスファルト量を増加させたアスファルト混合物を作製した.これにより,ワーカビリティの向上が確認されたものの,所定の締固めエネルギーでは4%以下の空隙率は得られなかった.そのため,ダレ試験を実施し最大アスファルト量を求める必要があると考えられる.