大坂 諒 半円形供試体曲げ試験によるアスコンのひび割れ抵抗性評価法に関する研究 高橋 修,中村 健  わが国におけるアスコンのひび割れ抵抗性を評価する試験として,静的曲げ試験,直接引張試験がある.これらの試験に用いる供試体は,配合設計とは異なる供試体の作製や転圧回数の調整など,煩雑な作業が必要となる.静的曲げ試験は試験温度-10 ℃,載荷速度50 mm/minで行うため,載荷直後に破断する.評価対象の性能差がわずかであると試験結果が不明確になる.直接引張試験は,引張試験用治具と供試体をエポキシなどで接着させる必要がある.また,試験中に接着面からの剥離が起こりやすいといった問題点がある.  そこで本研究では半円形供試体曲げ試験(Semi-Circular Bending Test,以下SCB試験)に注目した.この試験は欧州規格(EN)やASTM規格,AASHTOの規格に規定されており,また,一部の研究者はこの試験による評価法について研究している.しかしながら,わが国では,この試験法は舗装調査・試験法便覧に記載されておらず,試験法についての実績や知見も見当たらない.そして,アスコンのひび割れ抵抗性を正しく評価できるか否か明らかではない.そのため,今後わが国でSCB試験を運用していくためにも基本的な知見が必要である.また,静的曲げ試験などとの関係性についての知見も必要である.  EN,AASHTOに規定されている試験法は,特殊な治具や作製器具を用いて試験を行っており,現行の試験機や作製器具では試験できない.そこで本研究では,ENとAASHTOの試験法をベースとした試験条件で,より簡易的なSCB試験によりひび割れ抵抗性を評価できる試験条件や評価指標を検討する.なお,本研究では性能の異なるアスコンを試験対象とし,ひび割れ抵抗性の違いが試験結果に反映される試験条件や評価指標の検討を行った.まず,暫定的に選定した試験条件で供試体の厚さによる試験結果のばらつきを検討した.この検討により,供試体の厚さは50 mmが妥当だと判断された.次に,厚さ50 mmの供試体を暫定的な試験条件で試験温度による差異を評価した結果,5℃以下では静的曲げ試験や経験的な知見とほぼ一致したが,10 ℃以上になると静的曲げ試験や経験的な知見と一致しない部分が見られた.そのため,10 ℃以上でも評価が可能となる試験条件を検討した.その結果,載荷速度を速めることで静的曲げ試験や経験的な知見と一致するようなデータが得られた.また,静的曲げ試験とSCB試験の関係を両者の評価指標により考察したところ,破壊エネルギは有効な評価指標であることを確認した.  以上の検討より,簡易的なSCB試験によりひび割れ抵抗性を評価できることを確認した.