多和田 寛
実橋曝露試験による凍結防止剤の飛散と鋼橋の腐食に関する調査研究
岩崎 英治
鋼橋などの鋼構造物の腐食損傷要因として,様々な環境条件が考えられるが,特に積雪寒冷地においては,凍結防止剤散布による腐食損傷が多数見られる.1991年にスパイクタイヤの使用が禁止され,冬季の路面凍結対策として,凍結防止剤を散布する方法が現在最も一般的に行われている.凍結防止剤は主にNaClやCaCl2を主成分とするため,鋼構造物に付着した場合,腐食が進行し,必要な耐荷力を損なう危険性がある.凍結防止剤が鋼桁に付着する要因を考えると,本来は路面水に曝されない鋼桁部への漏水による凍結防止剤の付着と,車両通過や風により路面上の凍結防止剤が飛散して,鋼桁に付着する場合が考えられる.実際に腐食損傷に至る要因としては,前者の漏水によるものが多数を占めているが,後者の凍結防止剤の飛散による損傷も報告されている.
耐候性鋼の使用に関して,高低差のある並列橋では,凍結防止剤が鋼桁へ飛散することを防ぐため,様々な注意が必要であるとされているが,高低差のない並列橋が存在する場合に対しては,調査事例が少なくその実態は把握できていない.凍結防止剤散布地域における高低差がなく並列する橋梁では,その外桁面,特に並列橋の間の部分での凍結防止剤の飛散量が多く,曝露試験片の板厚減少量も大きいという調査事例の報告もある.
このような状況にあって,凍結防止剤散布橋梁において飛散した凍結防止剤の鋼桁への付着状況を系統的に調査した事例はまだ少なく十分ではないことから,凍結防止剤の飛散による鋼桁の腐食についての定量的な知見を得るには至っていない.
そこで本研究では,凍結防止剤が散布される複数の橋梁を対象にして,その腐食因子について調査し,凍結防止剤の飛散による鋼桁の腐食についての定量的な知見を得ることを目的とした.具体的には,凍結防止剤散布橋梁における橋梁外桁面への凍結防止剤飛散量,橋梁外桁面に設置した1年曝露試験片の板厚減少量を調査し,凍結防止剤散布量と照らし合わせ,凍結防止剤の散布が鋼桁の腐食に与える影響について考察した.
その結果,凍結防止剤が鋼桁に飛散し腐食が進行することや,並列橋の間の部分にあっては,凍結防止剤の飛散量や曝露試験片の板厚減少量が非常に大きくなることが,複数の橋梁で確認できた.また,その知見から,凍結防止剤散布地域における鋼橋の防食方法について検討した.
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