衣川 扶
伸縮装置を用いた橋梁モニタリングに関する研究
宮下剛 准教授
近年,国内で供用されている橋梁の経年劣化が進行し.今後はさらにその割合が増加する.このような状況下で,橋梁にはそれぞれに合わせた計画的,効率的な維持管理方法の提案,実施が必要とされているが,そのためには橋梁ごとの,立地環境や使用頻度等の把握が重要となる.橋梁の劣化を進行させる要因は複数存在するが,その一つとして「設計荷重以上の車両の通行」が挙げられる.そのため,橋梁路面上を通行する車両の総車重や頻度等の把握は,維持管理計画を立案する上で重要となるが,それらを把握する技術として「BWIM(Bridge Weigh-In-Motion)」がある.
本研究では,橋梁の効率的な維持管理のために伸縮装置を利用したWIMによる実交通の把握を目的としている.本手法は,橋梁の応答を伸縮装置から取得するという点で既存の手法と比較し新規性がある.伸縮装置の応答と車重の関係を利用することによって,橋梁形式や部材の材質によらず計測を行う事が出来るほか,計測データに大きな変化が生じた場合は,伸縮装置の異常が予想できる事から,伸縮装置のモニタリングが同時に行える可能性がある.
研究の流れとしては,まず車重や走行速度が既知である試験車両を用いてキャリブレーション計測を行い,荷重に対応したフィンガー部の応答量を求めた.その後,実交通の計測により得たひずみ量から,走行車両の重量を算出し,実交通と伸縮装置の現状について検証した.
以下に本研究から得られた結果を示す.
1)試験車両によるキャリブレーション計測の結果から,伸縮装置フィンガー部に発生するひずみは,走行車両の重量と相関性があることが確認できた.
2)伸縮装置のひずみ応答を分析することにより,総車重を10%未満の誤差範囲で求めることが可能であることが分かり,実交通のおおよその実態を把握することが出来た.
3)伸縮装置の位置毎のひずみ発生頻度から,車両の走行箇所や疲労損傷度が高い箇所が分かった.これより,損傷の発生しやすい箇所の予測が可能であることが分かった.
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