吉崎 健司
ニューマチックケーソンを大深度立坑へ適用するためのワイヤブラシによる止水法の研究
杉本 光隆
ニューマチックケーソン工法の作業室内は,地下水圧に対抗するため高い気圧となっている.現在,圧気圧約0.7MPaまでは,ヘリウム混合ガス呼吸システム等を併用することにより,作業室内での有人作業が可能となっているが,それ以上の圧気下では,減圧症の危険性が高まるため作業できない.気圧約0.7MPaは,単純に静水圧で考えると,約70mの深度となる.
ニューマチックケーソン工法の圧気は,作業室内に水が浸入することを防ぐためのもので,水の浸入を抑えることができれば圧気圧を下げられる.そこで,シールド機のシールドテール部で使用されているシステムを参考に,地下水面下70mを超える深度において,作業室内の圧気圧を0.7MPa以下に抑える止水装置が提案された.この装置は,ケーソン側面に数段のワイヤブラシを設置し,そのワイヤブラシ間にグリスを充填して,地下水圧が作業室内に伝達されない構造となっている.
本研究では,上記で提案した止水装置が,実際に止水能力を有しているのか,どの因子が止水能力に影響を与えるかを確認することを目的として,要素実験を行った.得られた結果を以下に列記する.
(1)地盤表面に凹凸がある場合,保護布が無いワイヤブラシは,最大グリス圧400kPa以下であるのに対し,本研究の保護布を付けたワイヤブラシでは,最大グリス圧1.5MPaの止水性能を有しており,保護布を付けると大幅に止水性能が向上する.
(2)地盤表面の形状による最大グリス圧への影響は,地盤表面の凹凸の有無>地盤表面の段差>地盤表面の凹凸間隔,の順となり,地盤表面の凹凸の有る方が,地盤表面の段差が大きい方が,最大グリス圧は小さくなった.
(3)ワイヤブラシのサイズが大きいと,ワイヤブラシの地盤への押付け力が大きくなること,ワイヤブラシと地盤の接触長が長くなること,保護布が地盤の凹凸に追従しやすいことから,グリスが漏出しにくくなる.
(4)提案したワイヤブラシは,グリス圧1.0MPaを1時間保持できる止水性能を有しており,グリス圧1.0MPaで制御している間は,グリス注入流量はほぼ0L/min/mであるケースが多かった.
(5)グリスが漏出したのは,地盤表面の段差が大きい,または,凹凸間隔が狭い場合で,保護布が凹凸に追従しづらくなり,保護布と段差に隙間が生じたためと考えられる.
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