白井 隆文

3DFEMによるシールドトンネル覆工の設計定数の検討

杉本 光隆

 トンネル覆工設計における解析的手法は,主としてはり‐ばねモデルによる解析と連続体モデルによる解析の2つに大別される.はり‐ばねモデルでは覆工に作用する断面力を合理的に算定できる利点がある.しかし,地表面沈下の算定などができないという欠点があった.連続体モデルは,複雑な地盤や構造物の形状を考慮できること,掘削に伴う地表面への影響を検討できること,3次元の取扱いが可能であるといったメリットがある一方,解析領域の設定や応力解放率に結果が大きく依存するという問題があった.
 過去の研究において,変位境界のはり‐ばねモデルを拡張し,覆工と周辺地盤をモデル化した3次元FEMモデルを開発し,パラメータスタディによってモデルの妥当性を確認している.しかし,周辺地盤の変形特性を規定する物性値は,はり‐ばねモデルと3次元FEMモデルで異なり,現在用いられている換算式は信頼性が低く,両モデルの関係性が不明確であるという課題があった.
 そこで本研究では,はり‐ばねモデルと3次元FEMモデルの解析結果を比較し,両モデルで変形や断面力が一致する換算式を求め,両モデルの関係性を明確にすることを目的とした.
 まず,はり‐ばねモデルと3次元FEMモデルにおいて,トンネル半径r,地盤反力係数とトンネル半径の積k×r,有効裏込め注入率αgを変数とし,それぞれ7×12×5パターンの計420ケースにおいてパラメータスタディを行った.
 その後,曲げモーメントが覆工の変形と対応することに着目し,扁平率を指標として,覆工と地盤条件が同一であれば両モデルの扁平率は等しくなるという条件に加え,パラメータスタディの結果や既存式を参考に,2つの条件を設定し,換算式を導出した.さらに,はり−ばねモデルと3次元FEMモデルの特性が異なることから,軟弱地盤(k≦50MN/m3)における両モデルの扁平率が等しくなるように,補正式を導出し,換算式を決定した.
 換算式の妥当性を,トンネル半径で正規化した曲げモーメントによって検証した結果,正規化曲げモーメントは3次元FEMモデルよりはり‐ばねモデルの方が大きくなった.実設計においては,地盤のN値から弾性係数Esを求め,そこから地盤反力係数kを算出することが多い.3次元FEMモデルに比べ,後工程であるはり−ばねモデルで安全側の評価となっており,提案式は妥当であると考えられる.
 今後の課題として,3次元FEMモデルは,硬質地盤にも適用可能であることから,NATM工法による計測データにより,本モデルの妥当性を検証する.

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