櫻井 高志
固有異方性を有する砂質土が線形弾性挙動を示すひずみ領域
豊田 浩史
近年，近接施工や重要構造物の増加に伴い，地震応答解析や振動解析などの地盤解析を詳細に行う必要性が高まっている．これらの解析には，微小ひずみ領域における各種変形係数が必要となるが，測定方法については基準化されていない．既往の研究では，固有異方性に着目し，ベンダーエレメント試験(BE試験)，局所ひずみ測定試験(LSS試験)を実施した．この結果，豊浦砂のような扁平性の小さな土粒子でも，固有異方性を発現することが明らかとなった．更に，堆積角度αが大きくなるにつれて，排水強度qmaxは減少するという負の相関性があることが明らかとなった．一方，LSS試験において微小ひずみ領域におけるデータのばらつきが見られたため繰返し載荷試験を導入したが，安定した結果を得ることはできなかった．
本研究では微小ひずみ領域における各種変形係数を正確に算出するために試験機・試験方法の改善，そして固有異方性を有する砂質土が線形弾性挙動を示すひずみ領域を明らかにすることを目的とした．
微小ひずみ領域における測定精度向上のためにペデスタルの改善と供試体直径の変更を行った．その結果，ペデスタルの改善により微小ひずみ領域におけるデータのばらつきが解消された．また，供試体直径の変更により供試体の設置が容易となった．この二つの改善により，微小ひずみ領域における測定精度が向上した．
試料には豊浦砂を用いた．また，固有異方性の影響を調べるために堆積角度αは0°，22.5°，45°，67.5°，90°とした．供試体作製後，有効拘束圧150kPa，排水条件でBE試験，LSS試験を実施した．本研究から以下の結果が得られた．
(1) 堆積角度αが大きくなるにつれて，初期せん断弾性係数G0は増加傾向を示した．この傾向はBE試験，LSS試験の両試験において確認された．
(2) 堆積角度αが大きくなるにつれて，LSS試験から得られた線形弾性挙動を示すひずみ領域は減少傾向を示した．
本研究から得られた知見を以下に示す．豊浦砂のような扁平性の小さな土粒子でも，固有異方性を発現する．また，固有異方性の影響によって，同一試料でも線形弾性挙動を示すひずみ領域が変化するという新しい知見が得られた．
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