地盤工学研究室 大森 洋介

礫混じり砂の変形特性を考慮した液状化強度推定手法

指導教員 豊田 浩史

 液状化は,地下水位が高く,緩く堆積した砂地盤で発生するのが一般的である.しかし1995年に発生した兵庫県南部地震では,礫質土地盤が液状化したことが報告されている.この地震後,礫質土でも液状化判定が必要となり,現在N値による液状化強度推定手法が提案されているが,礫質土地盤においてN値の適用は難しいのが現状である.そこで本研究では,幅広い粒径を有する地盤の液状化評価手法の構築を目指した.方法としては,礫分含有率が液状化特性に及ぼす影響について,波動伝播特性と微小変形特性との関連性について調べた.さらに試料の初期相対密度は35%と緩い状態で実験を行い,昨年度行った初期相対密度75%の結果と比較を行うことで,密度の違いによる影響についても検討を行った.本研究で得られた結論を以下に示す.

(a) 礫質土の液状化特性
 礫分が質量比で20%を超えると,液状化強度の増加の傾向が大きくなる.この傾向については初期相対密度に関係なく,同様の傾向を示した.また,過圧密化によって液状化強度は増加し,この傾向も初期相対密度に左右されない.
(b) 礫質土の微小変形特性
 初期せん断弾性係数は,過圧密化,礫分含有率の増加により増加する.また,過圧密化の影響により,弾性領域が大きくなるので,正規圧密の状態に比べ,割線せん断弾性係数の低下の傾向が変化する.
(c) 波動伝播と微小変形試験から得られた初期せん断弾性係数
 波動伝播特性から得られた初期せん断弾性係数と微小変形特性から得られた初期せん断弾性係数は,礫分が増加するほど差が見られ,微小変形特性から得られる初期せん断弾性係数の方が大きくなる.
(d) 液状化強度に関連する波動伝播特性と微小変形特性
 液状化強度は,せん断ひずみ0.008%~0.015%のひずみレベルの割線せん断弾性係数よ良い相関性がある.このことから,割線弾性係数を利用して,幅広い密度の礫質地盤において液状化強度を推定できる可能性がある.
 そこで,割線せん断弾性係数を初期せん断弾性係数で正規化して,正規化G−εsを示したところ,相対密度による影響は見られず,過圧密比による影響が見られた.最終的に,原位置調査結果(VS)と過圧密の結果を用いることで,幅広い密度の礫質地盤において液状化強度を推定する手法を示した.



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