ken15307

山下　晃史

網代浜海岸における離岸流の発生状況の把握手法の検討

犬飼　直之

　本研究では，新潟東港に隣接する網代浜海岸において現地調査を行い，離岸流の流速，発生間隔の発生状況を把握する．現地調査で得た観測データと調査時の波浪・地形条件を用いて推算した推算値との比較を行い，離岸流の流速，発生間隔がどのような要因に依存するか把握することで，波浪・地形条件が変化しても離岸流の流速，発生間隔を定量的に把握できるようになることを目的とする．
　現地調査は，平成27年12月9日に新潟県北蒲原郡聖篭町網代浜海水浴場で実施した．網代浜海水浴場は，新潟東港に隣接するカプス地形を有し，突堤に囲まれた砂浜海岸である．調査時の波浪データには，調査場所である網代浜海水浴場より西方10㎞に位置する国土交通省港湾局の新潟沖観測所で観測された波浪データを使用した．現地海岸の離岸流場に海面着色剤を散布し，離岸流の可視化を行い離岸流によって海面着色剤が拡散される様子をUAVマルチコプターにより上空から空撮することで離岸流の挙動を把握した．
　離岸流流速の推算には，西の離岸流流速を推算する式を用い，離岸流発生間隔の推算値の推算には，質量・運動量保存則から導出した宇多の離岸流発生間隔の推算式と経験式に基づく佐々木の離岸流発生間隔の推算式を用いた．宇多の推算式による推算値と観測値とでは若干の相違が生じたため，浅水変形に及ぼす波高の影響を考慮し修正を行うことで推算式の精度の向上を図った．
　本研究の現地調査により，循環流を可視化し観測することで循環流の大きさや離岸流および向岸流の流速を把握することができた．西の手法による離岸流流速の推算式より観測値とほぼ等しい値を推算できたことから，現地海岸の流速を推算可能であることを確認でき，離岸流流速は波高，波の入射角に依存するといえる．離岸流発生間隔の推算は，経験式に基づく佐々木の離岸流発生間隔の推算式と，質量・運動量保存則から導出した宇多の推算式を現地の波浪および地形条件にあわせて修正し推算式を用いて行なった．佐々木の推算式では，現地の離岸流発生間隔を精度よく推算可能であることが確認できた．浅水変形に及ぼす波高の影響を考慮し修正を行った宇多の推算式より，観測値とほぼ等しい値を推算できた．本研究の観測値と推算値の比較より，現地観測時に今後おこなう必要のある調査項目を明確にすることができた．流速と発生間隔の推算式を用いれば，海底勾配を把握している海岸では波浪条件がわかれば，発生する離岸流の流速を推算でき，水難事故防止に役立てることが可能であると考えられる．

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