嶋田 拓斗

水理実験による狭い砕波帯を持つ 砂浜を遡上する波浪の挙動の把握

犬飼 直之

一般に沖の波浪の危険性は周知でありそれに対する研究なども多く存在する.しかし,海難事故の発生の防止のためには沖の波浪の挙動だけでなく陸を遡上してくる波浪の挙動の把握も必要であると考える.そこで本研究では2014年5月4日に新潟県の上下浜で発生した水難事故を例にとり,狭い砕波帯を有する海岸を遡上する波浪の挙動の把握を目的とした.研究手法として水理実験室内の造波水路を用い,上下浜の地形を断面2次元的に再現し,実験を行うことで派路胃の挙動の把握に努めた.
上下浜事故の把握を行い,事故時の水深4.9m,有義波高1.2m,有義波高時周期7.9s,最大波高2.08m,最大波高時周期8.5sという結果を得た.その波を実験装置の性能を踏まえ20分の1の縮尺により再現をした.その際縮尺模型のひずみが生じてしまうため相似側により補正を行った.本実験は自由水面下での実験であるためフルード数を一致させることにより相似法則を成り立たせた.水路内に再現する地形の作成には木材を用いた.その際,装置を入れるだけでは浮力により地形模型が浮いてしまうため,上から固定するなどして措置を取った.実験を行うに当たり潮位差とwave setupによる水位変動の影響を考え,水位の補正を行った.本実験では波浪の挙動を映像に撮りその映像を解析することにより,波浪の遡上距離,遡上速度,遡上時の水の厚さ,最大水厚場所の汀線からの距離の4つの諸言について把握した.
実験値と実現象の比較を行ったところ,遡上距離では実験値の方が若干小さい値となった.その要因としては地形を鉛直2次元で考えたためビーチカスプの影響を考慮できなかったためと考えられる.最大流速について解析を行った結果,有義波では,汀線1.4m付近で最大の9m/s程度となり,徐々に減速する.また,最大波では,汀線から4m付近で最大の16m/s程度となりこちらも徐々に減速する.最大厚さについて有義波では,汀線から2m程度の場所で最大となり,高さ1m程度となる.また,最大波では,汀線から4m程度の場所でほぼ最大となり,高さは2m程度となる可能性がある.有義波程度の波でも小さい子供であれば転倒・浮上させ,海へ流出させることが可能であるので,砂浜上でも汀線に近づかないなど注意が必要である�

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