金城 雄也

河川減水域における流れと水温輸送に関する2次元数値モデルの適応

細山田 得三

 河川環境や河川における生態を考える上で,水温は重要な検討項目になっている.特に水棲生物分布に及ぼす影響は大きく,魚類の生息適温上限は水温28℃と言われており,夏季における河川水温上昇を防ぐことが求められる.
 新潟県においても,信濃川山間部にある宮中取水ダム下流において放流量を制限したため,減水区間の発生とそれに伴う水温上昇が起こり沿川住民の注目を集めた.この問題の調査・改善のために水温変化を予測,評価する水理水温解析モデルが使われ,河川環境改善を試みた.用いられたモデルは河川水温の空間分布および時間変化を予測可能な曲線座標系を用いた計算が実施されている3次元水理水温モデルである.このモデルを見てみると, 3次元でありながらも減水域全体の1次元的な情報の把握が主要な結果となっている.このため,河道内部の横断方向の考察が欠落しており,横断方向に極めて浅い水深が存在する場合の温度分布の変化に関する結果が十分ではないように思われる.そこで本研究では,河道内部の水温分布や線流量分布に応じた水温変動の時間・空間方向の把握が可能となる水理モデルの構想を目指した.既往のモデルでは水深方向の温度分布はほぼ一様であり,3次元計算を実施する必要はないと思われる.今回対象とするような減水区間を含む河川のような水深がゼロ,すなわち河床が露出した場合でも計算できるようにするために洪水氾濫解析に用いられる平面2次元の非線形長波方程式に基づいた数値モデルのベースを構築した.
 40m3/sから150m3/sまで6ケースの放流量で計算を行い,河川への流入の様子と水深・水温・流速などの出力を行った.その結果,水深については概ね現地データに近い値を計算できていた.しかし,水温の出力については40℃以上の箇所が発生することや放流量を増加させても水温にあまり変化がない結果となった.原因としては,河川空間(流水域)を取り囲む面(河床・側壁・水面)における熱量の出入りが現時点で完璧に再現できているわけではないためであり,この部分については今後既往研究を参考にしながらモデルの高度化を図りたい.また,河床地形については数値地図50mメッシュを内挿して10mメッシュとしたため十分ではない.地形情報の高度化については,格子サイズが1mや5mのデータセットが作成されつつあり,それらを利用して高精度の地形を利用した計算を実施していく予定である.


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