ken15211

坂本　尚允

すべり面構成式の開発と土構造物の耐震残留変形量評価への適用性に関する検討

大塚　悟

日本は４つのプレートに囲まれており，世界有数の地震大国である．近年では1995年に発生した兵庫県南部地震をはじめ，2004年の新潟県中越地震，2007年の能登半島地震，東北地方太平洋沖地震が発生した．また，首都直下地震や南海トラフ地震などの規模が大きい地震が，近々発生するといわれている．これらの大地震に備えるため土構造物の設計時にレベルⅡ地震動を考慮する必要がある．しかし，すべての土構造物のレベルⅡ地震動に対する安全率を1.0以上に設計することはコストが高くなり不経済である．そこで，大規模地震に対してはある程度の損傷を許容することが合理的であると考えられており，土構造物の耐震性評価に残留変形照査の導入が重要視されている．斜面の安定解析では分割法に代表される極限平衡法が幅広く用いられてきた．この方法の特徴は，地盤中に各々のすべり面を仮定し，すべり面によって区切られた土塊の変化を簡易に解析することができる．本論文では剛塑性理論に基づいた分割法を用いる方法を提案し，解析結果の適用性を照査した．次に、残留変形解析に用いるすべり面の設定法に関して，Newmark法の課題について整理し，合理的な設定手法を提案した．以下の結論を得た．
1) すべり面の剛塑性構成式を提案し，残留変位解析手法を開発した．開発した解析手法はNewmark法と同様の解を与えることを確認し．更に，Newmark法で解析できない静的問題（自壊モード）へ適用できることを示した．
2) 残留変位解析に用いるすべり面の設定方法を提案した．具体的には，水平震度を与えて安全率が1となる際のすべり面を求めることにより，合理的なすべり面が得られる．
3) 事例解析より，残留変位解析で用いるすべり面は慣用解析で用いる，自重崩壊に対するすべり面とよく一致して，設定方法による差異が小さいことを示した．したがって，工学的には慣用解析で合理的なすべり面が設定できることを示した．

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