土田 雄大

砂質地盤の液状化対策における排水工法の有効性に関する研究

大塚 悟

液状化は多くの地震で発生しており,過去に兵庫県南部地震,新潟県中越沖地震で確認されている.近年発生した東日本大震災においては造成地盤や沿岸部の宅地での液状化による地盤変状はよく知られている.液状化に関する知見は土木,建築において幅広く活用され,数々の対策工法が考案されてきた.しかし液状化対策として実際に被害低減に活かされているのは,大型公共工事や大型建築物などごく限られた範囲にとどまっている.特に個人が所有する小型建築物では,液状化に対する対策はほとんど見られず,地震時に液状化による地盤変状により被害を受けるケースが後を絶たない.そこで,大規模な地盤改良に比べ比較的低コストで,狭隘な土地でも対策が可能な工法として「排水パイプ工法」がある.排水パイプ工法とは穴を開けた塩ビ管を地中に埋めることにより過剰間隙水圧の消散を促す工法である.本研究では,排水パイプ工法に着目し,設計方法の確立のため,振動台を用いた模型実験を行い,その結果から排水距離のモデルを提案し,振動台模型実験と実規模振動台実験とを比較・検証を行うことでモデルの有効性を確認した.
振動台模型試験では,排水パイプ1本での性能の検証(CaseA)と複数本での性能の検証(CaseB)を行った.CaseAでは,模型実験でも液状化した地盤で排水パイプの効果により消散効果が見られたこと,パイプの開口率は10%と20%では差異が比較的小さいこと,排水パイプ付近では杭のような構造的効果があることが確認された.CaseBでは,間隔が狭くなると水圧の抑制効果も大きくなること,加振中から水圧の消散が行われ,加振後も早期の消散が確認されたこと,複数本ではパイプの杭のような構造的効果が大きくなるが確認された.
次に排水パイプの有効距離を模型実験や既往の研究より得られた知見からモデル化を行い,振動台模型実験と実規模振動台実験を比較することでモデル化を行った有効距離について検証を行った.排水パイプの内径の違い,パイプ側面の開口率の違い,深度による液状化発生率の違いの3つの観点から検証を行い,それぞれの補正係数を求める.その後,その補正係数を用いることで,排水パイプの排水距離と過剰間隙水圧比との関係を対数モデルとバイリニアモデルの2つの式で示すことで,提案した排水距離のモデルは有効性があると確認された

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