多田 尚平

車内騒音を用いた路面性状の評価に関する基礎的研究

非破壊検査の中でも音を利用した試験は比較的簡易的に実行でき,汎用性の高い手法である.本研究の目的は音の性質を利用した新しい非破壊検査技術として車内騒音を用いて路面舗装の健全度を評価する技術の基礎を研究することにある.車内騒音は走行中であれば常に発生しており,録音しデータを収集するだけであれば,一般的な音を利用した非破壊試験であるAE試験のように高価な機材を必要とせず,非常に簡単に手に入る.そのため,車内騒音を用いれば費用をかけることなく路面舗装の維持管理に必要な検査を行うことができると考えた.本研究では路面舗装の維持管理に車内騒音を用いる評価方法を得るにあたって,必要な検証やデータの利用方法などの検討を行い理論の基礎の検討を行うものである.
そして騒音の周波数特性を考察し,自動車の車内騒音の音圧や卓越周波数が変化する影響因子としてどのようなものがあるかを知るために実験を行った.具体的には検証として騒音計により自動車の走行音の大きさを計測して得た,音圧振幅-時間グラフをFFTによりフーリエ変換することで,音圧振幅-周波数グラフへと変換を行い車内騒音の卓越周波数をもとめ周波数特性を求めた.実験を行った結果,車内騒音には路面の状態以外にも,車種,走行速度が関係することがわかった.
さらに公道で騒音データを計測する際には,同時にGPS測量を行い,位置情報を記録した上で計測した騒音データと計測道路位置の情報を連動させる試みを行った.またGPS測量を行う方法として,GPSロガーの機能を持つスマートフォンアプリを用いてその利用方法を考察した.位置情報はGISに対応しており,投影して道路地図と重ねて表示することで視覚的に認識できる.車内騒音は走行速度により変化をすることが実験によりわかっているため,騒音データを計測する際には走行速度も同時に計測する必要がある.スマートフォンアプリには移動速度を計測する機能が備わっており,位置情報と時間軸の関係上から,その精度について検証した.その結果,スマートフォンアプリによって計測した移動速度は概ね正確であり,十分利用できることがわかった.

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