加藤 大佑
豪雨時斜面崩壊要因の抽出と広域斜面危険度予測に関する基礎的研究
大塚 悟
近年,日本各地において集中豪雨による各種土砂災害が多発している.降雨に伴う代表的な土砂災害として斜面崩壊が挙げられる.晴天時に安定していた斜面が降雨時に崩壊するということは,降雨が要因の一つであることは明らかである.近年では平成23年7月新潟・福島豪雨,平成26年8月の広島土砂災害において発生した斜面崩壊により,多くの尊い命が失われた.豪雨発生時の環境や崩壊の状態によって被害の形態は様々だが,豪雨による斜面崩壊が多くの人命に関わるという点は共通の事実である.集中豪雨が多発する我が国において,斜面崩壊の危険度を予測することは防災計画の重要事項であり,より精度の高い危険度予測を行うことは,多くの人命を救うことに繋がる.
本研究では平成23年7月新潟・福島豪雨を対象とし,GISを用いて,豪雨時斜面崩壊要因の抽出とその結果を用いた広域的な斜面崩壊危険度予測に関する基礎的研究を行う.既往の研究により危険度予測は発達を続けてきたが,未だに斜面崩壊の発生メカニズムは不明な点が多く,その予測精度は決して高いとはいえない.斜面崩壊予測の高精度化を図るためには,斜面崩壊のメカニズムを明らかにすることが不可欠である.従来の研究では,事後崩壊データを用いて各要因について分析しているものが多く,崩壊形態等の地形に着目したものは少ない.そこで,斜面崩壊の発生位置と規模に着目し,分析を行った.
斜面崩壊危険度の評価を行うにあたって,斜面崩壊の素因である地域特性,誘因である降雨特性について斜面崩壊が発生しなかった斜面情報を含め分析を行い,対象地域における崩壊特性を調査した.しかしながら,雨による分析を行うためには,斜面崩壊が発生した時刻情報が不足していたため,本研究では特に豪雨時の斜面崩壊においての地形の要素のみに着目し,地形と崩壊の関係についての分析と評価を行うことを目的とした.地形要因としては,遷急線と傾斜についての検討を行った.遷急線については,一般に崩壊は遷急線付近で発生し易いといわれていることから,遷急線を地形データから抽出することで,危険度の高い地域の可視化を図る.また,崩壊には,斜面の傾斜が大きく影響していると考え,崩壊と傾斜の関係について分析の手法を検討し,分析を行う.分析では,崩壊地付近の断面の走査を行い,断面の特徴から崩壊の発生位置と規模の必然性についての考察を行った.
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