小野 緑

模型実験による土の侵食特性の測定

大塚 悟

斜面崩壊や河川堤防への内部侵食や越水による破堤は人命や財産を脅かす重大な災害であり,これに対する防災対策は急務の課題となっている.中でも堤防などに影響を与える事故の原因は,約30~50%が地盤の内部侵食である.堤体などの土木構造物の安全性に関しては,越流や法面のすべりに重点を置かれているが,現状では,内部侵食における防災対策は急務の課題になる.しかし,内部侵食は,外部からの情報が得られず,初期段階での検出が困難であり,地盤の侵食パラメータと地盤特性の関係性に対して十分な整理がされておらず,未解明な点が多いのが現状である.
本研究では,内部侵食の中でもパイピングにおける侵食特性を把握するため,Wan&Fellによって提案されたHET(Hole Erosion Test)と呼ばれる内部侵食の模型実験を行った.このHETは実験装置の規定も定まっておらず,試験方法や供試体作製方法,試験開始時の水頭差,試験終了のタイミング等,明確な基準が設けられてない.データの分析には供試体作製方法や,水頭差の設定が重要である.本研究では,侵食特性の測定装置の開発と,試験方法の確立,実測値から,侵食係数とせん断応力の算出を行った.
試験で用いるHET装置は,侵食ユニットの上流側に流量計と差圧計を設置し,透明な侵食ユニットを用いることで,試験中の観察も同時に行うことができる設計とした.そして,地盤の侵食特性を測定するため,模型実験を行った.従来の実験方法を見直し,流量と圧力差から,限界せん断応力と侵食率を算出することができた.Wan&Fellの式と,Limの式を組み合わせ,流量と圧力の実測データから,限界せん断応力と侵食率を求めることができた.
本研究により,侵食されやすさの違いを侵食係数の値の大きさの違いとして算出することができた.侵食に強い供試体を用いる場合,現在の実験装置では20kPa以上の圧力差を供試体に作用させることができないため,計測ができなかった.よって,今後はポンプを導入することでその問題を解決し,高圧力下での実験をすることで,侵食に強い供試体の測定を可能にする.一方,砂が多く侵食しやすい供試体を用いる場合,流量が2.8L/min以下でも侵食が発生する.その際,本研究で用いた流量計の範囲が2.8〜45L/minであるため,侵食している供試体の計測ができないという問題がある.よって,2.8L/min以下で測定が可能である流量計の設置をする必要があり,供試体の強度に合わせた流量計の設置をすることで,より高精度な実験を行うことができると考えられる.

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